第13話 火を見るよりも明らかな事
食後の雑談は今日のところはみんなも疲れているという事で、ほどよいところで切り上げられ『おやすみ』のあいさつを交わした後、各自、蝋燭を持って自分の部屋で休む事になった。客室の場所が分からないオレは、ポールの案内で部屋へと向かう。
「ソウタはここの部屋を使ってくれ! 俺の部屋は反対側のここだから、夜中でも何か困ったらいつでも呼びに来てくれ」
どうやらポールの部屋はオレの部屋と廊下を挟んだ反対側らしい。
「わかった。ありがとう! おやすみ」
「おう! おやすみ! 明日な!」
しかし、案内された部屋はガラス窓ではなく突き上げ窓だったので、窓が閉まった状態だと外からの光も入らず、渡された蝋燭を持ち歩かなければ、部屋の中でさえもまともに歩けないほど暗かった。オレとしては全く眠くないのだが、これだけ暗いと寝る以外に選択肢はほぼなさそうだ。
それにしてもパンは固いし、スープは味が薄いし、飲み物は酸っぱいし……不味かったな。料理をソフィアに教える事になったから、それでどうにかなれば良いけど……。
「よし、ちょっと部屋が暗いけど、始めるか……」
オレはこの暗い部屋の唯一の明かりであるサイドテーブルの上の蝋燭に近寄り、アイテムボックスからノーマルチケットを出してベッドの上に並べていく。え~と、二十二枚だから二十枚で十一連が二回出来るから余りが二枚か……。この二枚は取っておいてもいいかもな。とりあえず、十一連二回いってみるか!
早速、両手でノーマルチケットを握って念じて、お馴染みの白い部屋に移動する。まあ、当たり前だが、そこにはレアチケットの時よりもショボい作りのガチャガチャが設置されていた。とりあえず、そのガチャガチャに二十枚を入れる。するとレアガチャの時と同様に、空中に数字が浮かび上がる(よし、ちゃんと二十二って表示されてるな)。今回は暗い部屋で開けるのは大変なので、一回引くごとに開けていく事にする。
まずは一回目のガチャを引き、カプセルを開けてみる。すると白い光の後に自分の体が淡く光り、頭に情報が流れ込んでくる。
「HPの最大値の上昇?」
そう頭に情報が流れ込んできたので、どのぐらい上昇したのかステータス画面を出して確認してみる。
♦ ♦
【名前】 ソウタ・ホンダ
Lv 1
HP 11
MP 11
XP 165/500
スキル アイテムボックス
召喚獣 ヘルハウンド
♦ ♦
うっ! 一しか上がらないのか……意外とショボいな。ん? MPも増えてる? ……あっ! 違うか、MPはポーションを飲んだ時に、よく分かんないけど上がったんだった。それに気付いてなかったけど、ステータス画面の情報が色々増えてるな。なるほど、ロイロはヘルハウンドっていう召喚獣だったのか。XPも分母が表示されてるから、多分、五百で次のレベルに上がるという事なんだろう。この獲得したXPにはロイロが倒した分も経験値として入っているのかな? 今度、検証してみる必要がありそうだ。
その後も一回ごとにカプセルを開けて中身を確認していくと、白い光の後に鉱石、軟膏、ポーションなどの効果が分からないアイテムが続き、スキルやステータスUPが全然出ない。
「最初に出たのは運が良かっただけか……」
そして、九個目でやっと基本スキルのオーブを手に入れる。使ってみるとMPの回復速度の上昇で、どうやら常時発動するタイプのスキルのようだ。これはステータス画面には表示されなかったので、一応、買っておいた薄い木の板にメモしておく。
その後、回数分のガチャガチャを全部引いていった結果、ほとんどがノーマルのアイテムで当たりと言えそうなのはSTR、LUK、DEXのステータスUPの三つだけだった。どうやら、その三つもステータス画面には表示されないようだ。
「表示されないと、いまいち上がった実感がわかないな!」
多分、HPと一緒で一ぐらいしか上がってないのかもな。でも塵も積もればだから、見付けたノーマルチケットは出来るだけ買うようにしよう。ノーマルアイテムばっかりで、欲しかったステータスUPとスキルオーブは全然でなかったけど……。そんな事を考えながら、ベッドに散らばるアイテムを蝋燭に近づけて一つ一つ確認して、アイテムボックスにしまっていく。まあ、見ても分かんないんだけどね……。
♦ ♦
ステータスUP HPの上昇×1
STRの上昇×1
LUKの上昇×1
DEXの上昇×1
スキルオーブ MPの回復速度の上昇×1
アイテム 赤いポーション×4
青いポーション×4
紫のポーション×1
軟膏 ×2
鉱石 ×4
ナイフ ×1
インゴット ×1
♦ ♦
これが今回、ノーマルガチャで手に入れたものだが、ポーションとナイフ以外はどこかで鑑定しないと何なのかよく分からないな。
「コールさんとか鑑定できないかな? 明日にでも……うっ…………きゅ、急に腹が……」
突然、前ぶれもなく腹がギュルルルと鳴り、激痛と共に嫌な汗が噴き出る。オレは急いで立ち上がり足をクロスさせて壁に片手をつき、危機が一時的にでも過ぎ去るのを痛みに耐えながら待つ。こ、これは絶対にあのスープだ……。海外旅行ですぐに腹を壊すオレがこうなる事は、火を見るより明らかだったじゃないか。それをソフィアに嫌われない為に、あんなにも大量に食べてしまうなんて、オレは馬鹿だ。それに漏らしたら、結局、嫌われるじゃないか……(こっちの方がダメージは大きい)。それでもオレは諦めずに芋虫のような速度ではあったが、ひたすらトイレを目指して進んだ。
(誰かが入ってた時点で、オレのこの街での生活は終わりだな……)
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