第2話 十一連ガチャ!

 とりあえず、森を脱出する事を目標にしたものの、方角が分からないので勘を頼りに進んで行く。一応、持ち物を出発前に確認してみたら、全く今は役に立たないものばかりだったので、アイテムボックスにしまっておいた。スマホも持っていたけど、もちろん圏外で、唯一の救いはスニーカーを履いていた事か……。


 この森は眺めている分には綺麗で癒されるが、歩いてみるとなだらかではあるが起伏があり、かなり体力を使う。それにどこもかしこも緑一色で同じように見えるし、いくら進んでも同じ所をグルグル回っているような不安を覚える。


「目印を付けてるし、元の場所には戻って来てはいないと思うけど……。一応、ここにも目印を付けておくか……」


 土がむき出しになっている場所を見付け、小石を地面に矢印型に置いていく。するとその瞬間、低木の奥で『ギャーギャー』とか『キューキュー』と聞いたことないような鳴き声が聞こえてきて、背筋が凍る。よく考えたら、ここは深い森だし肉食獣がいる可能性もあるのか……。鉢合わせしない為に大声で威嚇するべき? それとも木に登る?


 結局、どちらも得策とは思えず、静かにその場でじっとして様子をみる事にする。今のステータスじゃ戦えるわけないし……っていうかステータス関係なく草食動物にも普通に負ける気がする。せめて武器でもあれば……。もしかしたら、もう手に入らないかもしれないけど、レアチケットを使っちゃう? 勿体ないけど死んだら元も子もないし……。悩んだ末に、アイテムボックスからチケットを取り出す。


「十一連ガチャお願いします」


 そう言うと、また白い空間に強制移動させられ、前回とは違うガチャガチャの前に立っていた。


「ふ~っ! 何かここの空間、もの凄くほっとするな。もしかして、ここって最強の安全地帯なのでは?」 


 流石に野生動物もここまでは追いかけては来れないだろうし、チケットを何枚か残しておけばピンチの時の緊急避難場所にできるかもとも考えたが、最終的には一回多く引ける方を選ぶことにした。覚悟を決めて、レアチケットを一枚一枚、差し込み口に挿入していく。全部が入れ終わると、ガチャガチャ本体が淡く光り、空中に十一の赤い数字が浮かび上がる。とりあえず、回数分を一気に回し、カプセルは開けずに床に並べていく。


「よし、開けていくか! カプセル自体は全部一緒なんだな」


 まず、一番左のカプセルを開けてみる。黄色い光の後に、赤い液体が入ったガラスの小瓶をゲット。多分、ポーション的なものなのだろう。効果とレア度は不明。二個目、同じく黄色い光の後に青い液体が入った小瓶。三個目、黄色い光の後に刃渡り十五センチぐらいのナイフ。初めての武器? をゲット。


「多分、これだけ黄色の光が続くって事は、確率的に黄色の光がレアかな? 一応、刃物が手に入ったけど、これじゃハグが出来るぐらい近づかないと攻撃できないし、次に期待だな」


 その後も続けてカプセルを開けていく。しかし、四回続けてレアを引き、すべてポーション。思わず、台パンしたくなるレベルでゴミしか出ない。いや、効果が分からないだけで、良いものかもしれないけど、レア度がね……。これでポーションの個数は赤が三つ、青が二つ、紫が一つとなった。やっぱり、効果が分からないと不便だし、鑑定とかあれば欲しいところだな……。


「え~と、あと四個か。お願いしま~す」


 八個め、初めての紫の光! 出たものは……。


「おおっ! 強そうな弓じゃん! これで遠距離から攻撃が……って、矢は? おい~~~~大事なやつ~~~!」


 ふ~~っ! 久しぶりに叫んじゃったよ。矢がなきゃ撃てないじゃん! 紫に光ってたから、多分、紫が激レア? プラチナチケットの時は虹色に光ってたから、虹色が超激レアで確定だと思うし、伝説レアではないよね……?


「あと三個になっちゃたよ! え~と、九個目?」


 気を取り直して、またカプセルを開けていく。九個目、レアの指輪。効果不明。十個目、レアの赤いポーション……。


「おい、どうなってんだよこの店! せめて最後ぐらい武器か鑑定、頼むぞ!」


 願いを込めて、最後のカプセルを開ける!


「おお、激レア! ……宝石?」


 最後に出たのはテニスボール大の透明な宝石で、中心には黒い霧のような物が渦巻いていた。


「これ、ただの宝石じゃないよな? 中で何か動いてるし……もしかして、これが召喚獣を呼ぶやつか?」


 その宝石を両手で持ち、召喚獣に呼びかける。


「出てきて、オレを助けてくれ!」


 すると、宝石が粉々に砕け、足元に召喚陣が出現し、そこからせり上がるように黒いオオカミがあらわれた。


「おお、強そう! っていうかデカいな」


 体高は一メートルぐらいはありそうだ。襲われたら間違いなくひとたまりもない。そんな事を考えていると、また、森に強制移動させられる。オオカミは周りを見渡すと、何事もなかったかのように、ゆっくりとオレに近づくと、オレの体に頭を擦りつける。オレもそのお返しとして、大きな首に抱き着いて、体を撫でてあげた。食われると思ったのは内緒。


「多分、普通のオオカミじゃないよね? もしかして伝説の魔獣とか?」


 そう聞くとオオカミはお座りの状態で首を傾げている。残念ながら言葉での意思疎通は無理のようだ。


「何か周りで変な鳴き声がしててさ、心細かったからお前が来てくれて良かったよ」


 今度はそれを聞いたオオカミは、目をパチクリすると藪の中へと走り去っていった。ええっ、弱気な事を言ったから、愛想をつかされた? 本気でそう思ったのだが違っていたようで、オオカミは何かを捕まえてすぐに戻って来てくれた。そして、オレの前にそれを置くと見てみろと言わんばかりに、鼻でこちらに押し付けてくる。


「わあ! 鹿みたいだけど、なんだろこの生き物? もしかして、これが鳴き声の主だったの? それをやっつけてきてくれたって事? あれ? 違った? う~ん……言葉は伝わってそうなんだけどな。そうだ、オレが言っていることが正しかったら、こういう風にウンウンって頭を動かして、違うときはこういう風に横に振るの! わかった?」


 するとオオカミはウンウンと頷く。わあ~すげぇ~頭良いし、かわいい! 言葉は分かっていたけど、返事の仕方が分からなかっただけだったのか……。その後、再度、質問するとやっぱり、オレが怖がらないように鳴き声の主を狩ってきてくれたようだ。何この天使、最初、食われると思ってごめんね……。

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