第6話
「お姉ちゃんとネッ友になれる?」
今日も今日とて隣の教室に連れ込まれる。その先でこんな事を言われてしまい、困ってしまう。
「アカウントも知らないのにどうやって?」
「この紙に書いたやつが、お姉ちゃんのアカウント!頑張って!」
そう言って逃げる様に隣の教室へと戻っていく由里子。困り果てながら、渡された紙に書かれたものへと目を落とす。
"@SP_CL_P"
どこかしらで見たと経験が
とりあえず席へ戻り、昼の休み時間まで授業だったりをこなす。何やら周りの気分は高揚しているらしい。今日が金曜日だからだろうか。
ロンドンのある時計台で流れているらしい、そんな鐘の音が自分達の味方としてやって来た。放課後を伝える鐘だった。いつもなら心の中で拳を掲げるのだが、そんな余裕は昨日くらいから既に無かった。俺の頭が肉片としてしか機能していないのか、働くのが面倒過ぎて寝ているのか分からないが、殻に閉じ籠もった人を引きずり出す様な打開策が思い付かないのは確かだった。似た者同士な土屋は使い物にならないだろうし、他のクラスメイトとは敷居が高くて話せない。クラスカーストの底辺に惹かれるものがあるのだろうか。到底そうには感じないが。
そんな俺は孤独の帰路でも考える。ここまで来たならば最後まで……と言う感じだろうか。
そんな風に考えていたから、帰路の風景なんて記憶には無く、扉の前で僅かに積み上げた、小さな砂上の楼閣が頭に残っているだけだった。鍵穴が回ると、家の玄関が俺を出迎えてくれた。部屋とバッグの片付けを済ませてスマホと向き合い、今朝の出来事を検証するべく、紙に書かれたアカウントの文字列を入力する。
朝に喚いてた頭が言った通り、そのアカウントは物凄く見知った民だった。夜な夜なメッセージやら電話やらで明るく振る舞っているのに、それの光で大きな影が出来ていたのだ。とりあえずはメッセージをいつもの様に交わし、相手の影をどう照らすか模索する。
相手が親しい人だと分かったならば、過去の記憶を総動員してでも解決に向かわせる。そう息巻いて、薄い湯けむりが立つ頭を掻きながら、自室の机に向かって考える。相手へ送ったメッセージの反応を待ちながら。どうやって相手から悩みを訊き出すか。そんな事をひたすら考える。
頭に漂うのは焦燥感ばかりで、肝心の物は出て来ない。壁に掛けられた時計は、いつもと変わらず音を出して、細長い針を動かす。静かな部屋にそれが響き渡る。明日から数日は学校が無く、勿論両親も居ない。それを思い出して、本能に従うまま、布団に身体を包ませ手元にあるスマホから電灯を消す。すぐに頭がぼやけ初め、現実離れした世界へ意識を運んでいく。
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