第2話

 SNSを始めてから一ヶ月ほど経っただろうか。フォロワーが増えたり、土屋に俺のアカウントがバレたりと様々だった。

 日差しが頭の上から来る時間に教室で暇してる土屋と話す事は、最早SNS一色になっていた。別に嫌ではないが、ここ数日で急につまらなく感じてきた。何故かは分からないが、違う話題で話したい思いが強まるのを感じつつある。

「もうその話題飽きたから変えてくれん?」

「あとしばらくは変えないぞ」

「登も乗り気だった癖に〜」

「土屋に合わせてただけだよ」

「じゃあここ一ヶ月の思い出は…」

「幻想だったんじゃないの?」

「冷たすぎじゃない?」

「俺の得意技だし」

「もうその道でやっていけるんじゃ?」

「どの道でやってけるんだよ」

 そんなどうしようも無くて無為むいな会話をしながら、学生にとっての貴重な休み時間を過ごす。

 外から聞こえる絶叫に耳を塞ぎながら、一人でここ最近を思い返してみる。

 気になった人を目のつく限りフォローしていたら、いつの間にか数百人フォローしていたり、逆にフォローされた数も少しづつ増えてきた事。

 土屋にアカウントが見つかって、しばらくはネットの名前で呼ばれていた事。

 思い返してみると、なんだかんだ言って楽しめているから、始めて良かった様に感じた。

 尚、学校でスマホを触るのは禁止されている為、校門を出るまで我慢しなければならない。既に俺はSNSの魔力に取り憑かれていて、学校が終わるまで我慢するのがつらくなってきていた。

 必死に我慢し続けて、ようやく学校が終わり、一目散に校門を出る。校門前でSNSを見てみると、どうも楽しそうな声で溢れていた。何とか全てを見ようと、てのひらほどの画面をスクロールしていると、一つ気になる投稿が目に留まる。

『プロフィールの所在地パラレルワールドで草』

 他の投稿と何ら変わらない筈なのに、思わず笑ってしまった。とりあえず反応しておいて、俺一人だけの家に帰る。

 寄り道をしながら家に到着し、スマホを開いてみると、何やらメッセージが届いている。

『初めての投稿に反応してくださりありがとうございます!』

 どうやら、先の投稿をした人から来たメッセージらしく、"スペードの民、クローバー"としてフォローされていた。

『いえいえ、思わず笑ってしまったので反応したまでですよ。こちらこそフォローありがとうございます』

 そんな言葉を返信し、向こうからの反応を待つ。

 カップ麺何個分かの時間を適当に過ごしていると、スマホに通知が来る。

『いえいえ!これから仲良くしていきましょう!』

 そんな元気の良い返信に、俺は同意するような言葉で返した。

『そうですね。これからもよろしくお願いします』

 そこからは、お互いの呼び名や自己紹介をして、少しづつ仲が深まっていくのを感じた。いつの間にか、お互いの事を理解し笑い合える様になる事を目指そうと思えてきた。また気づくと外は暗闇で、時間を忘れて会話していたようだった。

 ここ最近はずっとSNSが気になり、居ても立ってもいられない事が多いのだが、今回でそれが加速したように思える場面が多くなった。

 今日も寝る前にクローバーさんとメッセージをやり取りし、満足な気分で明日を迎える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る