第3話
黒いもの、の正体は人間の髪の毛であった。
バサっと長い艶やかなロングヘアが花梨というべきかサラというべきか。
私の黒い艶やかな毛並みは人間の艶やかな黒髪へと変貌したのである。
私はどうしたんだろう?
なぜ人間などになっているんだろう?
隣にいる男性は隆人(たかひと)と言うらしい。
私はどうも隆人と結婚しているらしい。
人間界では主婦と言うみたいだ。
状況が飲み込めないまま、、、、
私は人間界で人間になったようである。
私は花梨(30)ということまで理解した。
とりあえずお腹がすいたという隆人という旦那様にご飯の用意をしようと思う。
もちろん、包丁も持ったことがない。
私は猫だったのである。
絶対猫だったと悟られないように私は卒なく家事をしようとする。
初めから綺麗になんてできない。
卵とやらの割り方がまずわからない。
でもどうにかこうにか『朝食』と言うものを作り上げた。
『疲れた…』
と内心、花梨(この名前で統一しよう)
は思ったのである。
人間は偉そうで傲慢で自分勝手でわがままだと思っていたけど!
いろいろ大変なのねと花梨は思ったのである。
人間は私たちのことを自由に甘えてくる時だけ甘えてきてツンデレで天邪鬼でって思ってると思うけど『猫』で生きてるのもなかなか大変なのよ。
人間と猫の世界は相容れないけれど、お互いにお互いの生活を想像するとなかなか大変である。
飼い猫はいつもご飯にありつける。でもご飯にありつくまでの苦労がある。
私はそんなご飯が安定してもらえる人生より自由をとってた。
でも人間となってしまった今、、、、
飼い猫にも苦労があったと気づいた。
みんなそれぞれの立場にならないとわからないことが多すぎる。
傲慢で好きな時にペットを愛でていらなくなったら『あっちに言ってて』と言ってると思っていた人間にもこんな苦労があったとは。
ご飯を食べるって大変なこと。
生きるって大変なこと。
ある一定の見方ではなく多方面から見極めないといけないんだなと花梨は思ったのである。
そりゃあ見事にぐちゃぐちゃな出来栄えの朝ごはんを隆人は
「美味しいよ」
と言って完食してくれた。
花梨は内心嬉しかった。
どう作ればいいかわからなかった朝食とやらを完食してもらった。
自由を心底愛し、自由で生きていくことにプライドを持っていた花梨としては誰かに何かをして嬉しい気持ちになるなんて人生で経験したことがなかったのである。
花梨は『1匹でも生きていける。人間にも他の猫にも頼らない』
そう思って生きてきた。
飼い猫として可愛がられてる猫より私は自由を手に入れてると思っていた。
そうやって自分を鼓舞しなきゃ生きてこれなかった。
でも急に人間となり、人間の世界に一歩踏み出してわからないことだらけの中
ここで生きていかなきゃいけないのか。
また猫に戻れるのか?
花梨はどうなるんだろうか?
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