第9話 空間魔法使いを探す件

「う~む」


 俺は現在、ペニカたちと出会った森からほど離れた草原で、ステータス画面を表示させてその前で腕組み胡座をかきながら唸っていた。

 今持っている耐性を確認しているのだが。


++++++++++

・耐性

【落下無効】

【空腹無効】

【火炎無効】

【物理無効】

【毒無効】

【呪い無効】

【雷属性無効】

【闇属性無効】

【光属性無効】

【死霊属性無効】

++++++++++


 なかなか他に俺に効きそうなものが思い浮かばない。

 だから俺は、同時に横に自分の習得できるスキル一覧を表示させ、他に耐性の持っていない魔法属性がないかと確認していた。


 そして俺は見つけた。

 見つけてしまった。


【空間魔法】


 こんな文字があるではないか。

 これなら俺をレベルアップさせてくれそうだ。

 ひとまず自分で習得してみて、自分に使ってみることにする。


++++++++++

名 前:群青 空

種 族:人族

称 号:【使命を授かりし転生者】、【妄執に取り憑かれた狂人】


L V:2138

H P:60871

M P:79964


総合戦闘力:7429


S P:5014


・スキル

【召喚魔術Lv10】

【詠唱省略Lv10】

【並行演算Lv10】

【空間魔法Lv10】


・EXスキル

【転生(4/2138)】

【異世界言語理解】


・耐性

【落下無効】

【空腹無効】

【火炎無効】

【物理無効】

【毒無効】

【呪い無効】

【雷属性無効】

【闇属性無効】

【光属性無効】

【死霊属性無効】

++++++++++


 早速俺は自分に向かって【空間魔法】の一つ【時空斬】を自分に使ってみた。

 しかし自分に当たりそうになった瞬間、その魔法は霧散してしまった。

 どうやら魔法は自分には使用できないみたいである。

 残念。

 流石に都合の良い世界だと言っても、そこまで都合は良くないか。

 仕方ない。

 ここは【空間魔法】を使えそうな人がいる場所を探すしかなさそうだ。


 そして俺は昨日入ろうと思っていた街に入り聞き込みを開始。


「あの、空間魔法を使える人を探してるんですけど」

「こんな小さな街にいるわけないじゃない!」

「どこにいると思いますか?」

「まあ、魔法学校か王城の宮廷魔法使い辺りなら使える人がいるんじゃない?」


 街の食堂のおばちゃんはそう言った。

 小さな街の食堂のおばちゃんなのでかなり信憑性は薄いが。

 それこそネット掲示板よりも信憑性が薄いだろう。

 小さな街の大して人のいない食堂のおばちゃんの情報源なんて井戸端しかないんだからな。


 しかし魔法学校と宮廷魔法使いというのはなかなか良い情報だ。

 俺は更に小さな街の大して人のいない食堂のそこそこ太っているおばちゃんにそのことを深掘りしてみる。


「魔法学校ってのはどこにあるんですか?」

「魔法学校ぅ? 確か……エレジア領だった気がするわね」

「エレジア領、ですか」

「そうそう。ここから北東に向かって70kmくらい先に行ったところよ」


 70kmか……。

 俺の今のステータス値なら一日で辿り着く距離だな。


「宮廷魔法使いの方は、王城とかにいるんですかね?」

「多分そうだと思うわ」

「王城は王都に?」

「らしいわね。私は行ったことないから分からないけど」

「で、王都まではどれくらいあるんでしょうか?」

「王都までは……ええと、確かここから30kmくらいの場所ね」


 おっ。

 王都の方が近いのか。

 30kmなら一瞬で辿り着くな。

 半日もかからん。


 よし。

 まずは王都に向かうとしよう。

 出来ればテンプレ的にお姫様が何者かに襲われてると助かるんだけどな。



   *****



 はい。

 お姫様が襲われてました。

 何だよ、テンプレ最高かよ。


 馬車の周囲には殺された騎士たちが数名倒れていた。

 そんな中、一人孤立したお姫様っぽいドレスを身に纏った女の子が気丈に立ち、襲いかかってきている黒ずくめの男たちを睨みつけていた。

 彼女は銀髪を腰まで伸ばし、凜とした顔立ちの15、6歳くらいの少女だった。


「くっ……! 貴方たち、ペニカには手を出してないでしょうね!?」


 ……む?

 ペニカ?

 知り合いなの?


 まあ歳も近そうだし、ペニカも良いところの出っぽかったし、面識があってもおかしくはないか。

 そういえばペニカたちが襲われていた時も、何か知ってはいけない情報を知ってしまったみたいな感じだったな。


「ははっ。それはどうかな。アイツらがペニカをどうするかはアイツらの勝手だ」


 アイツらってあのペニカたちを襲っていた黒ずくめの奴らだろうか?

 だとすればもう死んでるな。

 俺が殺したからな。

 そこの黒ずくめの仲間さんたち、そんな余裕ぶってる暇はなさそうだぜ。


 心の中でそんなことを呟きながら俺は経過を見守る。

 アイツらの仲間って時点で俺を殺せる可能性は望み薄だが、こっちには何かしら秘策があるかもしれない。

 それを頼ってみよう。


 そう思っていると、ようやく状況が動き始めた。


「ユリア王女。抵抗しなければ、殺しはしないぜ?」

「……その言葉、本当でしょうね?」

「ああ、本当だとも。お前を殺しても俺たちにはメリットはないからな。逆に殺さなければ、お前で遊び放題だから、存分にメリットを楽しめる」


 そう言って男たちは下卑た表情をユリア王女と呼ばれた少女に向け、下品な笑い声を上げた。

 ユリア王女は心底軽蔑する視線を男たちに向けるが、大人しく両手を上げた。


「これでいいのでしょう? さあ、私を好きにしなさい」

「ハッ! 物わかりの良い王女様で助かるぜ!」


 そして男たちはユリアに近づき、手足を縄で縛ると、ビリビリとゆっくり服を引き裂き始めた。

 ドレスが完全に破かれ、下着姿が露わになる。

 あら、意外と大きい。

 とと、そんなことはどうでも良くて。

 俺の前でおっぱじめられるのは流石に勘弁。

 おっさんどもが王女様を陵辱しているのを楽しめる性格ではないし、そもそもそんなレベリングに関係のない無駄な時間も勘弁願いたい。

 というわけで、俺はわざと足音を鳴らしながら登場した。


「何者だ!?」


 男たちは足音を聞き慌てて振り返り、俺に誰何すいかした。

 だが俺はそれに答えない。

 黙って男たちに近づいていった。

 そうすれば痺れを切らした男たちが襲いかかってくるのではないかと踏んだのだ。

 そして思惑通り、男たちは俺に襲いかかってきた。


「何者か知らんが、ここに顔を出したのが運の尽き! サクッと殺させて貰うぜ!」


 そう言って男の一人が腰にぶら下げた剣を鞘から引き抜き、構えながらこちらに駆けてくる。

 ふむ……絶対に無理だろうが、一旦受けてみるか。

 斬ッ、と俺は袈裟斬りにされ、パックリと胸元が切り裂かれる。


「きゃぁああああああああああああああああああああああああああぁあ!」


 ユリアの叫び声が響き渡る。


「いっっっっってぇええええええ!」


 そして俺の叫び声も響き渡る。

 しかしそんな攻撃では俺は死なない。

 引き裂かれた胸元の傷は血を噴き出しながらも徐々に元に巻き戻っていく。


「ああ……。やっぱり……死ね、ない、か……」


 俺は痛みに苦しみながらも落ち込んだように言う。

 そんな俺を見て、男たちは恐怖の声を上げた。


「なっ、何故死なない……」

「何なんだ、お前は……」

「クソッ! どうなってやがる……! 王女の新たな護衛か……!?」


 しかし王女様も王女様で、


「何で、私のために……いやでもまだ死んでない……何で、どうして……?」


 と絶賛混乱中である。

 男たちはいまだ平然と突っ立っている俺を見て、恐怖で顔を引き攣らせながら叫んだ。


「やれッ! 殺せ! どんな方法でも良い! 絶対にアイツを殺せ!」


 その号令とともに、俺に向かって闇魔法やら光魔法やら火炎魔法やらがたくさん飛んでくる。

 もちろんメチャクチャ痛い。

 死ぬほど痛い。

 しかし死なない。

 俺のHPは一向に1も減らない。

 彼らは持てる手札を全部出し切ったのか、ぜえぜえと息を切らしながら膝をついた。


「流石にやったか!?」

「これで……流石に死んだろ……」

「くそっ、無駄に体力を使わされてしまったぜ……」


 完全にお疲れモードである。

 ただもう勝った気でいるらしい。

 しかし、そんな中、俺はボロボロの身体で思わずといった感じで言葉が漏れた。


「あっ……やべっ、意識が……」


 相手との決着を完全につける前に、俺は痛みで意識を失ってしまうのだった。

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死ぬほどレベルアップな件~死ぬたびにレベルが上がるので積極的にレベル上げしていたら、なぜか身を挺して助けたことになっていた美少女たちが過保護になってて困ってます~ AteRa @Ate_Ra

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