第66話 私なら大丈夫

 最近、ずっと田中くんのことが頭から離れなかった。


 田中くんとは、最初は単なるクラスメイトだったけど、私は彼に興味を持ち、彼に嘘の恋愛相談を持ちかけたことがきっかけで話すようになった。


 でも、それから彼との距離が少しずつ縮まっていくにつれ、私の中で何かが変わっていった。


 彼はいつも優しくて、相談にも真剣に乗ってくれる。


 そして、私の何気ない言葉にも耳を傾け、真摯に向き合ってくれる。それが心地よくて、いつの間にか彼と一緒にいることが自然になっていた。


 だけど、最近はその「自然」がだんだんと変わってきた。


 彼と一緒にいると、胸がドキドキするし、彼が他の子と楽しそうに話していると、どうしてもモヤモヤしてしまう。


 それが「恋」だと気づくのに、少し時間がかかった。


「やっぱり……私、田中くんのことが好きなんだ。」


 この気持ちはもう隠しきれない。


 それに、田中くんも私と一緒にいる時は楽しそうにしてくれる。


 その笑顔を見るたびに、心が温かくなる。彼のことが、今や私にとってとても大切な存在になっている。


 それに改めて気づかされたのは、前回のデートの時だった。


 田中くんにデートに誘われて、自然と受け入れてしまった自分がいる。


 それだけじゃなく、彼と一緒に過ごしている時間が本当に楽しくて、何気ない会話ですら特別なものに感じられるようになっていた。


「私……どうすればいいんだろう?」


 そんな時、思い出したのは美咲の言葉だった。


 前に相談した時、彼女は「自分の気持ちに正直になりなよ」って言ってくれた。それがずっと心に残っていた。


「正直になる……か。」


 今まで、田中くんに自分の気持ちを伝えることが怖くて、ずっと言えなかった。


 彼がどう思っているのか分からないし、もし私の気持ちが届かなかったら……そう思うと、どうしても言葉にできなかった。


 だけど、ずっとこのままじゃダメだ。彼への気持ちを胸の中に抱えたまま、何も言わないでいると、いずれその重さに耐えられなくなりそうだ。


「やっぱり……私、田中くんにちゃんと伝えよう。」


 このまま曖昧なままでいるのは、もう無理だ。田中くんに、自分の気持ちを伝える時が来たんだ。


 彼は優しいし、真剣に話を聞いてくれる。


 だからこそ、私も彼に真剣に向き合わないといけない。恋愛相談を受けてくれた時の彼の姿が、今も目に浮かぶ。


 あの時、私は彼に頼りっぱなしだったけれど、今度は自分の気持ちをしっかり伝えなければ。


 怖いけど……もう決めたんだ。


 私は自分の胸の奥にある感情を、ぎゅっと握りしめるように感じながら、深呼吸をした。


 次に会う時、私は田中くんにこの想いを伝える。


「……絶対、伝えよう。」


 その決意を胸に、私は少しだけ不安を抱えながらも、田中くんと過ごしたこれまでの時間を思い返していた。


 彼と一緒にいる時の幸せな気持ち、それを失うことへの怖さもある。でも、それ以上に、伝えたい想いが強かった。


 次の週末、私は田中くんに会う予定だ。その時こそ、ちゃんと気持ちを伝える。


「私ならきっと、大丈夫……だよね。」


 そう自分に言い聞かせながら、私は告白の瞬間に向けて気持ちを整理していた。


 田中くんに出会ってから、私の心の中に芽生えたこの想い──それを、ちゃんと彼に伝えるために。

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