第64話 初デート!
土曜日の朝、いつもより早く目が覚めた。ベッドから起き上がって、まず最初に考えたのは今日のデートのことだった。
「……いよいよか。」
デート当日。
俺が水瀬を誘って、二人で遊びに行くことになるなんて、少し前までは想像もできなかった。
でも、今日がその日だ。緊張しないようにしなきゃと思っても、どうしても胸がざわつく。
田中莉が選んでくれた服を身につけ、鏡の前で少し確認する。
悪くはない、と思いたい。田中莉のアドバイスを思い出しながら、自然体でいこうと心に決めた。
「よし、行くか……」
待ち合わせ場所は、駅前の大きなショッピングモール。水瀬とは午後に映画を観る約束をしている。
******
早めに家を出たつもりだったが、水瀬はすでに待っていた。
「田中くん、おはよう!」
彼女の明るい声が、少し緊張していた俺の心を和らげた。
「おはよう、水瀬。ごめん、待たせた?」
「ううん、全然!私もさっき来たばかりだから。」
彼女は笑顔で答えてくれた。その笑顔を見ると、自然とこちらも笑顔になる。光莉が言っていた通り、あまり気張らずに自然体でいこう。
「今日は、映画観るんだよね。何を観るの?」
水瀬が嬉しそうに聞いてくるので、俺は事前に調べておいた映画のラインナップを頭の中で確認する。
「そうそう。ちょっと話題になってるアクション映画があったから、それにしようと思ってるんだ。」
「あ、それ面白そう!いいね!」
水瀬は映画の話をしながら、映画館の方に向かって歩き始めた。
俺も後ろをついて歩きながら、自然とリラックスしていくのを感じた。いつもの会話の延長線上だと考えると、少し気持ちが楽になった。
映画館に着くと、チケットを買って、軽くポップコーンを持ちながら席に座った。映画が始まる前の数分間、何となく水瀬との会話が弾んだ。
「最近、映画館で映画観るの、久しぶりかも。田中くんは映画よく観る?」
「うーん、最近はあまり行けてないかな。家で観ることが多いけど、たまにはこうやって大きなスクリーンで観るのもいいよな。」
水瀬は「そうだよね!」と頷きながら、楽しそうにポップコーンを口に運んでいた。
映画が始まると、俺は水瀬がどういう反応をしているのか気になって、たまに横目で彼女の様子をうかがってしまった。
水瀬は映画に集中しているようで、時折笑ったり、真剣な顔をしたりと、表情豊かに映画を楽しんでいた。
映画が終わると、席を立ちながら、彼女が楽しそうに感想を言い始めた。
「すごかったね!アクションシーン、迫力あったし、最後の展開なんてびっくりしたよ!」
水瀬の目がキラキラしていて、俺も自然と笑顔になる。
「確かに、最後のどんでん返しは予想外だったよな。思わず声が出そうになった。」
俺たちは映画の話題で盛り上がりながら、映画館を出た。話題に困ることなく、映画の感想を共有できるというのは確かに良い選択だった。
次はショッピングモール内のレストランで食事をすることにした。
水瀬が少し疲れている様子だったので、ゆっくりと食事しながら休むことにした。
「田中くん、今日楽しいね!」
そしてふと。彼女がそんなことを俺に向かって言ってきた。
水瀬が嬉しそうに笑う姿を見て、俺の緊張もほぐれていく。彼女がリラックスして楽しんでいるのを見ると、俺も少し自信が持てるようになった。
「俺も楽しいよ。誘って良かったと思ってる。」
そう言うと、水瀬は少し驚いたように目を見開いた後、照れくさそうに笑った。
「私も、誘われて嬉しかったよ。」
その言葉に、俺は胸が熱くなった。
自然と頬が緩んでしまい、心の中で少しずつ、告白のタイミングが近づいていることを感じた。
食事を終え、ショッピングモールを少し歩いて回った後、そろそろ時間もいい感じになった。
水瀬も楽しんでいる様子だし、俺もこのデートを無事に終えられそうだという安心感があった。
「今日はありがとう、田中くん。すごく楽しかった!」
水瀬が少し名残惜しそうに言ってくれた。その言葉を聞いて、俺は思った以上に今日がうまくいったことを実感した。
「こちらこそ、ありがとう。俺も楽しかったよ。」
水瀬が嬉しそうに笑ってくれるのを見て、俺は再び胸の中で告白の言葉が浮かびそうになる。
でも、今日はまだそのタイミングじゃない。デートを成功させた今、自信を持って、次のステップに進めるかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます