第30話 私告白しようと思います
あれからというもの、中村君と優奈は順調に関係を修復しているようだった。
廊下ですれ違う二人を見ていると、前よりも仲が深まっているように感じる。
中村君の誤解が解けたことで、優奈の明るさが戻り、俺も少しホッとしていた。
「やっぱり、二人ともお似合いだよな。」
俺は、いつも通り図書館で本を読みながら、そんなことを考えていた。
恋愛相談を受ける身として、うまくいっている二人を見ているのは純粋に嬉しい。中村君も優奈も、今はお互いに安心している様子だった。
しかし、その日の放課後、優奈が再び俺のところにやってきた。以前とは違って、今日は元気そうな顔をしているが、何かを決意したような表情も見て取れた。
「田中先輩……また相談に乗ってもらってもいいですか?」
その言葉に俺は少し驚いたが、すぐに頷いた。
最近は優奈の恋愛相談が続いているが、彼女が中村君とうまくいっているなら、きっとこれは次のステップの話だろう。
「もちろん。どうした?中村君とのこと、また何かあったのか?」
「えっと……そういうわけじゃないんですけど……」
優奈は少し恥ずかしそうにしながら、顔を赤らめた。どうやら、これは良い意味での相談のようだ。俺は静かに続きを促した。
「実は……中村君に、告白しようと思ってて。」
その言葉を聞いた瞬間、俺は少しだけ驚いた。
今まで優奈が中村君との関係を修復することに集中していたから、告白のことまでは考えていないと思っていた。
でも、彼女は本当に勇気を持って次のステップに進もうとしているんだ。
「告白、か……。ついにその時が来たんだな。」
俺が微笑むと、優奈は少し照れたように笑って、頷いた。
「はい……やっぱり、ちゃんと私の気持ちを伝えたいんです。中村君とは仲良くなれたけど、まだちゃんと好きだってことを言えてないし……彼も、どう思ってるか分からないし……」
優奈の声には、少しだけ不安が混じっていた。
彼女はこれまで、中村君との関係が気まずくならないように慎重にしてきたけど、今は自分の気持ちを伝える時が来たと感じているのだろう。
「そっか……確かに、気持ちを伝えるのは大事だよな。中村君もきっとお前のことを想ってるとは思うけど、ちゃんと伝えたいんだよな。」
「そうなんです。中村君がどう思ってるか、まだはっきり聞けてないんですけど……でも、このままじゃ、モヤモヤしてて……」
優奈は少し焦った様子で言った。彼女の中では、自分の気持ちを伝えたいという想いが強くなっているのが分かる。だけど、その告白がどう受け取られるか、不安も感じているのだろう。
「気持ちを伝えるのって、すごく勇気がいることだもんな。でも、優奈ならきっと大丈夫だと思うよ。」
俺は彼女を励ますように言った。
優奈の気持ちは、これまでの彼女の努力からもよく分かる。
中村君との関係を築いてきたその強さが、告白の勇気にも繋がるはずだ。
「田中先輩、ありがとう……でも、どうやって告白したらいいんだろう……。私、告白なんてしたことないし……」
優奈はまた不安そうな顔をしていた。確かに、告白の仕方なんて普段から考えていることじゃないし、どう伝えればいいのかは悩むところだ。
「告白の仕方、か……まあ、難しく考えなくていいんじゃないか。お前の気持ちをそのまま素直に伝えるのが一番だと思うよ。」
俺がそう言うと、優奈は少し考え込んでいた。
やっぱり、彼女にとって告白は大きな一歩なんだろう。
「……でも、素直にって言っても、なんて言えばいいのか分からなくて……どうすればちゃんと伝わるんだろう?」
優奈は真剣な表情で、どう伝えればいいか悩んでいる。それを見て、俺も真剣にアドバイスしようと思った。
「まずは、自分の気持ちを大事にすることだと思うよ。『好きだ』って気持ちをしっかり持って、それを中村君に伝えること。特別な言い方じゃなくていいんだ。お前の言葉で、正直に気持ちを言えば、それが一番伝わると思う。」
俺がそうアドバイスすると、優奈は少しずつ納得してくれたようで、頷いた。
「……そうですね。特別なことをしなくても、私の気持ちをちゃんと伝えればいいんですね。」
彼女の表情が少し明るくなったのを見て、俺は安心した。
告白は確かに難しいけど、優奈がしっかりと中村君に想いを伝えれば、きっと中村君もその気持ちに応えてくれるはずだ。
「よし、頑張ってみます!中村君に、ちゃんと自分の気持ちを伝えます!」
優奈は決意したように言った。その力強い言葉に、俺も自然と笑顔がこぼれた。
「そうだな。応援してるよ、優奈。中村君もきっと喜んでくれると思うからさ。」
「田中先輩、本当にありがとうございます!いつも相談に乗ってくれて……感謝してます!」
彼女は元気に言って、俺に頭を下げた。その姿を見て、俺も応援したくなる気持ちがさらに強くなった。
その日、優奈は意を決して中村君に告白する準備を始めた。
彼女の気持ちが伝わるよう、俺も心の中で応援していた。
これで彼女と中村君の関係がさらに深まれば、俺の「恋愛相談キャラ」としての役割も、少しは果たせた気がする。
「頑張れよ、優奈……」
俺は静かに呟きながら、彼女の背中を見送った。
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