第15話 カフェにて女子会2
私は放課後、カフェで結花を待っていた。
いつもは淡々としていて、恋愛には特に興味がなかった結花が、最近になって急に恋愛相談のようなものをしてくるようになった。
それがなんだか面白くて、私は毎回彼女からの相談を楽しみにしている。
「あ、来た来た」
結花がカフェのドアを開けて、私の方に歩いてきた。彼女は少し緊張した顔をしている。
何かを言いたいけど、どう切り出すか迷っているときの表情だ。
「美咲、待たせてごめんね」
「ううん、大丈夫。今日もまた田中君の話?」
私がそう聞くと、結花は少し頬を赤らめてうなずいた。
その反応を見るたびに、私は思わずにやけてしまう。あの結花が、他人に対してこんなにも感情を抱くようになったなんて、ほんの少し前までは考えられなかったから。
結花とは中学時代からの親友だ。彼女はいつも冷静で、自分の意志をしっかり持っている。でも、こと恋愛に関しては、今まで全く興味を示さなかった。
「別に恋愛とか興味ないし。人と深く関わりたいとも思わない」
そう言っていた彼女が、こんなにも一人の男の子のことを気にしているなんて。
「……私ね、最近自分がどうしたらいいのか分からなくなってきたんだ」
結花がそう呟くように話し始めた。私はじっと彼女の言葉を待った。
「田中君と一緒にいると、落ち着くんだけど……それだけじゃなくて、もっと彼のことを知りたいって思うようになってきて。今まではこんな気持ち、なかったのに」
「うんうん、いいじゃん。その気持ち、大事にしなよ」
私は思わず口元が緩んでしまう。
だって、こんなにも他人に無関心だった結花が「もっと知りたい」だなんて。
正直、驚きと嬉しさが入り混じった感情でいっぱいだ。
少し前までは、結花は他人との人間関係の相談なんて全然してこなかった。
そして、他人の恋愛話にも興味を示さず、ただ「友達として距離を保つ」ことを大事にしていた。
だからこそ、結花の変化には本当に驚かされている。
「結花がそんな風に思うなんて、田中君ってそんなに特別なんだ?」
そう言うと、結花は少し照れくさそうに視線をそらした。
「うん……なんか、最初はただ相談に乗ってもらってただけだったんだけど、田中君がいつも真剣に聞いてくれるし、すごく冷静にアドバイスをくれるから……気づいたら、彼のことをもっと知りたいって思うようになってたんだ」
結花の声はいつになく控えめで、でもどこか確信を持ったような響きがあった。
彼女がここまで気持ちを表に出すこと自体、すごく珍しい。だからこそ、私は本気で彼女を応援したくなった。
「田中君って、なんか大人っぽいよね。相談に乗ってる姿とか、確かに冷静で頼りになりそう」
「うん、そうなの。私、今までそんな人に出会ったことがなかったから……田中君と話すたびに、もっと話したいって思っちゃうんだ」
結花がここまで誰かに心を開いているのは、本当に珍しいことだ。
いつも淡々としていて、人に対してあまり深く関わりを持とうとしなかった彼女が、こんなにも誰かに興味を持つなんて、正直なところ驚きを隠せない。
「で、結花は、田中君のことどう思ってるの?」
私は少し意地悪な質問を投げかけた。彼女の顔がさらに赤くなり、私をチラリと見てから、小さな声で言った。
「……好き、かもしれない。」
その瞬間、私の中で何かが弾けた。
嬉しくて、どうしようもない気持ちが湧き上がってくる。だって、あの結花が「好きかもしれない」なんて言う日が来るなんて、全く予想していなかったからだ。
「えー!やっぱりそうなんだ!結花が田中君のことを好きになるなんて、嬉しいなー!」
思わずテンションが上がってしまった。
私の反応に、結花は恥ずかしそうに下を向きながらも、どこか微笑んでいた。
私は昔から、結花が誰かともっと親密な関係を築くことができたらいいなと思っていた。
彼女はどちらかというと一人でいることを好むタイプで、他人に心を開くのに時間がかかる。
そんな結花が、田中君に対してこれだけ強い気持ちを持っているのなら、私としては応援しないわけにはいかない。
「で、どうするの?このまま『恋愛の相談役』っていうポジションで満足するつもり?」
私は結花に少し踏み込んだ質問をしてみた。結花は一瞬考え込んで、ゆっくりと首を横に振った。
「ううん……このままじゃ嫌だ。もっと彼に、私のことを知ってもらいたい。彼にとって、ただの相談相手で終わりたくないって思うんだ」
彼女のその決意が感じられる言葉を聞いて、私は心の中でガッツポーズをした。
結花がこんなにも積極的になっているなんて、本当にすごいことだ。
「結花、絶対うまくいくよ。あんたがちゃんと自分の気持ちを伝えたら、田中君だって気づくはずだよ。もう一歩踏み出してみなよ!」
私は彼女を励ました。結花が「好きかもしれない」と自分で認めた以上、これからは行動するしかない。
「うん……次こそ、もっと私の気持ちを伝えてみる。」
彼女の目には、少しの不安とともに強い決意が宿っていた。私は、そんな彼女を全力で応援していこうと心に誓った
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