第78話 Day54 The darkest night (日の出の前がもっとも暗い)
Day54 昼1時 ちょいすぎ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
息が出来なく起き上がる事も出来ない男に
容赦なく800ポンド近くあるイノシシが突進してくる
体の上半身すら起き上がらせる事が出来ない
それでも腕は動く
男はとっさにガンベルトからイーグルを取り出し
慣れた手付きでイーグルの安全装置を指で
衝撃による息切れ
経験する機会は少ないであろうが それでも日常生活でもありえる
日本の場合だと体育の柔道で初めて投げられた時に経験しているであろう息切れ
他にもラグビー アメフト で投げ飛ばされた時
ボルダリングや木登りで落ちた時
交通事故で弾き飛ばされた時
意外と経験していたりする人は多い
息が吸えなくても体が動く場合
息が吸えなくて体が動かなくなる場合
そして そこに息が吸えなくて小さなパニックが誘発された場合
色々な症状がある
本来ならゆっくりと少しずつ息を吸って時間を掛ければ 数分で治る
が そんな
突進してくるイノシシが牙で男を捕えようと頭を少し下げる
死ぬのは覚悟している
が 戦わずして死ぬつもりは無い
男 :「ひゅーーー はーーー」
内臓が拒否しているのを無視して 強引に思いっきり息を吸い込む そして吐き出す
強引に息を吸い込んでいく
まるで肋骨が折れたかのような痛さを息を吸うだけで感じている
まるで像の足に胸が踏んずけられたかのような痛みを息をすうだけで感じている
痛みがある!
感覚がある!!
まだ やれる!!!
体が言う事きかない?
それがどうした!
腕が動く!
意識はある!!
眼も見えている!!!
男 :「Samson Give me your strength, lend me your might
(サムソン 強さを我に 力を貸したまえ)」
大声で叫んだが まるでヒソヒソ話のように声の無い声しか出ていない
男は祈りの言葉を口にした
それは助けを求めた言葉に聞こえるが実は違う!
その祈りは救いを求めていない!
男は救いを求めてはいない!!
その祈りは ただ男が
そして男は片目を
”ドン”
たった1発の銃弾
1発しか撃つ事の出来なかった銃弾
それはイノシシの右前足をこすり 後ろ足の
前足を血だらけにし 後ろ足が無くなった黒い獣はバランスを崩しながらも
男に向かってくる
男 :「ひゅーーーはーーーーーーー」
男は全ての息と力を使い左側にロールを試みる
足が無くなり男のいる位置より多少ずれている突進
息は吸えない 体の自由は効かない
でも腕と足は動く
男はよろけながらも力の限り ハイハイして移動し
近くにある木を登る様に手を動かし立ち上がる
足を1本失ったイノシシは巨体を支えきれない
それでもなお力を振り絞り男の方に向きを変える
しかし四肢の1つを失った痛みから
”ぶおーーーーー!!!!!”
怒りと痛さから悲鳴ともとれる 怒りからの
ハンティングで頭を撃つのは素人のする事
想定よりも硬い骨に銃弾が弾きだされるからだ!
それでも男はイノシシの頭を狙う
なぜなら開いた大口
それは内臓へ直接、銃弾を叩き込めるからだ!
男 :「はーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
男 :「In the name of Samson(サムソンの名において)」
”ドンドンドンドンドンドン”
”どさ” と大イノシシは倒れ 目から光が消える
それを見たイノシシの子達は 一心不乱になって川を超えて逃げ出す
***5分後***
男はコンバットショットガンを拾いながら
息をゆっくりしながら 目の光を失った大イノシシを眺めている
食べる訳にはいかない
かといって森の主に渡すのも違う
掘って埋めて森に返すか?
イーグルは本来 片手で撃つべき銃ではない
反動が大きすぎる為 反対の手で支えてやる必要がある
あの時 男は肘を地面につけて固定して反動を押さえようとした
何十回も、何百回も、何千回も撃って来た男の愛用の銃
だからこそ 片手での銃撃の難しさは これでもか! という程 男は理解していた
そして動いているターゲットを撃つ難しさ
それに加え仰向きで寝ている体制
前足を狙ったが命中はしなかった
が見事に後ろ足を捕えた
そして その後のロール
なんとか突進を避ける事が出来た
偶然か? 奇跡が起きたのか? なるべくしてなったのか?
分かっているのは本来なら死ぬはずであった男が生き残り
本来なら生きるはずであった大イノシシが死んでいるという事実
男 :「Samson I thank you for your help(サムソン 協力に感謝する)
I am offering this, (このイノシシを捧げたい)
what should I do?(どうすればいい?)」
そう 男が問いかけても答えは無い
それはそうだ 問い掛けに答えがある程 人生は楽ではない
取り合えずこれを動かそう
男は掘り出し終わったブルーべリーの木を抱えを荷車に
そして馬2匹を
そして、馬2頭に大イノシシの死骸を引かせる
***20分後***
大イノシシは引きずられ 森の坂を抜け野原に
鳥葬と言えばいいか 少なくとも崖のどこかに置いて置こう
少なくともブルーベリーを また取りに来た時に嫌な臭いが充満して欲しくない
そう思い野原をひたすら南に下っていく
そして ふと 恐怖を感じた坂の前に
今1度 坂を少し登ろうとするが
急激な寒気に全身の震え
体中の細胞が先を行くことを拒否している
男 :「。。。。。。。。。。」
男 :「In the name of Jesus, Samson and Able, I offer this
(イエス サムソン アベルの名において これを捧げる)」
男は馬からロープを外し、大イノシシの死体を坂の下に置く
そして再び森に戻り 馬2頭にブルーベリーの木が乗った荷車を引かせ
家に戻る
***午後***
あーでもない こーでもないと考えながらブルーベリーの木を庭に植えていく
日が暮れて、夜になり、男は今日 一日生き残ったことに感謝し
温いシャワーを浴びて、泥と汗と疲れを洗い流し
ウィスキーを軽く引っかけてからベッドにダイブした
***その頃 川の北側では***
大熊がイノシシの子を
それでも全然お腹が膨れない
やはり 馬と人間を食べなければ
しかも熊は元々 大イノシシを食べる事を考えていた
それが横取りされたのだ!
森の主は次に男が縄張りに入ったら
お腹の空き具合にかかわらず 即 襲い掛かる事を誓っていた
***数時間後 朝日が昇る前 坂の前***
本来あるはずの大イノシシの死体が綺麗さっぱり無くなっていた
月明りや星明りのない曇り空の下
本当の静寂が野原を包みこんでいた
動物の鳴き声はおろか 虫一匹すら音を出さない異様なまでの静けさ
風ひとつ吹かない純粋なる無音
音と光がそこだけ届いてないような深淵
まるでそこだけが、切り取られた空間のように、飲み込まれるような純黒
それはまるで王の中の王を招き入れたが
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます