第34話 Day17 Gut the Deer(鹿の解体)


叔父さんは言った

叔父さん:「もうティーンエイジャーになったんだ

      リス、ウサギ、七面鳥、鹿の解体を学ぶ時だ

      基本が出来れば全ての獲物の解体に応用が利く」


誕生日に叔父さんが男にピーリングナイフを渡した

それから狩の時に叔父さんが仕留めた獲物の解体を度々 男がやる事に


叔父さん:「知ってるか?

      日本という国の人は動物の解体を野蛮と思うらしい

      でもな あの侍の国はある意味スゲーぞ」


Sonyのウォークマンを大のお気に入りの叔父さんは日本贔屓びいき

動物の解体方法を教えながら叔父さんは続ける


叔父さん:「日本人にとってハンティングをする欧米人は野蛮だ

      欧米人にとって日本人はいい意味で野蛮だ

      日本では魚の皮と内臓を食べる そしてそれはとても旨い」

男   :「嘘だー」

叔父さん:「アメリカでは捨てる魚の皮 日本では鱗をとる事で食用となる

      内臓は たしか 酒盗 といったかな 酒のつまみに食べる」


男が動物の解体を始める

そして叔父さんが続ける


叔父さん:「日本では牛の内臓を食べる」

男   :「レバーは玉ねぎ合わせて焼いて食べるでしょ」

叔父さん:「レバーは生だ!」

男   :「嘘だー」

叔父さん:「そして 鳥刺し といったか 鳥も生だ」

男   :「それ 本当?」

叔父さん:「そして 生卵、卵も生だ。。。卵かけご飯だったっけか

      あとオイスターも生だ」

男   :「それ 病気とかにならないの?」

叔父さん:「当然なる! が それでも食べ続ける!!

      レバーだけは規制されたんだったっけ」

男   :「。。。。。。。。。。」

叔父さん:「ノロウィルスやら数日間 拷問のような経験

      嘔吐や下痢 発熱などを経験しても 死ぬような経験をしても

      次の週に刺身などを目の前に出された

      その事は それはそれ と割り切り即 生食を再開する」

男   :「日本人すげー」

叔父さん:「しかも 牛の内臓 部位によって値段が違う

      それぞれの美味しさがあるそうだ」

男   :「日本 パナイな」

叔父さん:「あー 素晴らしい国だ パナイんだよ

      そして イカ も食べる」

男   :「イカってカラマリ?」

叔父さん:「てんぷら といって揚げて食べるが。。。そして」

男   :「まさか あの くねくね の生物 生で食べたりは」

叔父さん:「当然する! なぜなら日本人だからだ!! 流石さすが 侍の血!!」

男   :「マジかよ。。。 スゲーな 侍」

叔父さん:「しかも アニキサスという寄生虫が生きている場合がある」

男   :「それって食べたら」

叔父さん:「地獄の苦しみを死滅するまでの7日間味わう事になる!」

男   :「うわーー」

叔父さん:「ただ 度数の高い酒を急性アルコール中毒にならないように分量を決め

      腹に溜まる様に1度に飲み込むと

      それがアニキサスに当たれば緩和するらしいが」

男   :「それって寄生虫は死ぬの?」

叔父さん:「いや しぶといはず

      確か50度のアルコールで25分

        70度のアルコールでも5分は生きられる

      だから死滅させるというよりも

      ビックリさせて内臓を噛むのを辞めさせるのが目的らしいが

      これと時間を置いて飲み続ける正露丸を兼用しつづけて

      下から出しちまうのが良いらしい

      

      ただこれに関しては聞いた話で

      なったことが無いから単なる噂なのか

      本当かどうか正確な事は判らない


      ただ川や海の獲物は 生で食うな!!

      必ず焼くか煮るか燻すか手を加えろ!」

男   :「生は無理だなー」

叔父さん:「そして日本では子供の頃から魚の解体はお手の物だ。。。

      現代の刀 包丁を使わせたら世界1だ! 流石 侍の血

      そんな凄い国の人達でも動物の解体は野蛮らしい

      銃は警察や軍隊やスポーツ

      ごく限られた人数の狩猟でしか持たれない

      その為 ハンティングと距離がありすぎる

      そして馴染みがないから野蛮に感じてしまう


      要は日常生活に組み込まれてるかどうかだ?

      アメリカではハンティングは日常だ

      日本では生食や内臓を食べるのが日常だ

      そして日常生活であるから それが当たり前だ

      しかし他の国の文化は日常ではないから野蛮に感じるだけだ」



Day17 昼4時 ちょいすぎ 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

極上の鹿の獲物だ!

なのでまずはタブレットでパシャ

記念撮影完了!!


大きさはパックリーダーと同じぐらいの大きさだ

本格的な血抜き 皮剥ぎは吊るしてから 約5時間近くかけてやる

。。。んだが如何いかんせん獲物が大きすぎる

また既に大量に血を首から流している

だから次の工程に行く予定なのだが

1人でこのままでは流石に厳しい


ちゃんとした狩猟所では吊るす用のワイヤーを付けてクランキングすれば

吊るせるんだが その機具が無い

その為 まずは内臓を取って重さを軽くしてからか


足の健をとりあえず切る

そして黄門からお腹の下の部分にかけてナイフを入れていく

この時 必ず皮を摘まんで持ち上げながら浅く 本当に浅く切り込みを入れる

これをしないで切り込みを入れた場合

胃や腸に穴が開き 内容物が出る場合がある為だ


切り込みを入れ そこに指を2本入れ 切り込み口を指2本で持ち上げ

指の間にナイフを入れ そこから切り込みを開いていく様に切っていく

少し黄いろがかった内臓がプクーと出てくる

切れ目を大きくしてそのまま黄色い胃をとりだすと

グレーな腸の塊が出てくる


それを同時に引き出すが。。。まあ当然つっかえてくる

ナイフをそのまま、頭の方へ切り込みを入れていく

肋骨のあたりまで切り込みを入れたら肋骨を少し大きく開く


”ゴリ ニチャー”


相変わらず この部分は慣れない

がやらなければならない 数をこなせば慣れるだろう


そしてまずは心臓が見えるので それを抜き取る

次に胃と繋がっている管を出来るだけ短く切り取る

最後に内臓を支えている膜をゆっくり右側から切り込みを入れる

そして今度は反対の膜をゆっくり左側から切り込みを入れる


この時点で方法は2通り

1つ目は両腕を入れて内臓を掻きだすやり方

2つ目は水の入った鍋を両手で持ち上げ傾ける事で水を流す要領

同じ要領で両手で獲物を持ち上げ 傾けることで内臓を出す

男はその1つ目と2つ目を同時にやるやり方


獲物を傾けながら少し掻き出してやる

最初に少しだした胃と腸がアンカーとなり残りの内臓が綺麗に取り出される


男   :「Yo Snake(おーい 蛇)」


まるで呼ばれるのが判っていたかのように

ガレージからニョロっとシロ蛇が出てくる


男   :「Heart looks ok, so as lung and others(心臓 肺 他も大丈夫そうだ)」


内臓の色や内臓に白ポチや違和感を覚える色がない事は確認済み

そしたらシロ蛇が チロッ っと心臓に向かって舌を出す

大きなグレープフルーツいや 小さなメロンぐらいの大きさ

そのままでは丸飲みできないだろう

そのため心臓を八等分してシロ蛇の前へ

シロ蛇がパクッと切り分けられた心臓を飲み込んでいく

その光景をコヨーテ3匹が物欲しそうに見ている

3つ程 飲みこんで4つ目を加えてからスルスルと何処どこかへ


男   :「Scar, Ubu, Donahue (スカー ウブー ドナヒュー)」


残りの心臓をコヨーテに投げてやる

そしてそれぞれが投げられた心臓を口でキャッチし

くちゃくちゃ食べ始める


男   :「Rest is yours(残りもお前達のだ)」


そしてリーダーの許しが出たのでコヨーテ3匹が内臓をかじり始める



そして男は軽くなった立派な鹿を そりに乗せ引きづっていく

庭の外の木に後ろ足を括り付け引き上げていく

ガレージから幾つかの物を用意


そりに乗った鹿

後ろ足2本の膝にビニール紐と木の丈夫なハンガーをぐるぐる

反対の足も同じようにぐるぐる

そしてそれを木に滑車の原理で引き上げて紐を木の幹にぐるぐる


まずは背中を向けさせ尻尾を掴む

そして黄門の下に切り込みを入れ 大きく黄門の周りを円を描くように切る

そして切り込んだものを押し込む


次に太ももの部分に切り込みを入れ360度 円を描くように切る

綺麗な赤紫の肉が見える

思わず男はにやけてしまう

リーンミート 鹿の肉は意外と可食部分が少ない

がこの異世界の鹿は食べる所が多そうだ

同じ要領で反対側の足の太ももの皮を円を描くように切る

そしてこの鹿 

綺麗な銀色を思わせるような白と

カプチーノを思わせるような茶色の毛

その境目に沿って太ももから切り込み 股に来たら黄門にかけてナイフを入れていく

そして皮を引っ張りながら腹にかけて皮と肉の間にある膜と油の部分を

丁寧に何度も丁寧に何度もナイフを入れていく


Leanリーンミートの鹿 東洋では桜肉と愛される鹿

その可食部分の大きさに男はナイフを入れながら思わずまたもや にやける


次に背中側も足から皮を剥いでいく

尻尾の骨がつながっている為このままでは皮は剥げない

そしてある程度、周りを剥いでから

尻尾を掴み 息を大きく吸ってから尻尾を下へ


”ゴキ”


もう一度


”ゴキ”


尻尾と肉をつなぎ合わせている関節部分にナイフで切り込みを入れる

見事に骨ががれる

そのままひたすら皮を剥いでいく

首の部分を切り落とし終了


次に剥いだ皮をテーブルの上に置き 油をこそいでいく

そして油をこそぎ終わったら塩をかける

塩、洗い、乾燥、毛づくろい、もう1度洗いの工程を経る必要があるが

極上の毛皮が出来るであろう

自分が持ってる鹿の毛皮とは次元が違う


頭は角が途轍もなく立派なので骨のトロフィーにする事に

トロフィーと剥製はくせいは別物である

剥製は木やプラスチック、粘土等で作った型に皮を付けていく物

トロフィーはいわゆる骨と角のみにする物

剥製の方がカッコいい

が 道具 材料 経験 全てが男にはない

その為 出来るのはトロフィーの方である


頭の上に切り込みを入れ、出来るだけ丁寧に頭の皮を剥ぐ

もしもアメリカに戻れるなら頭の部分の剥製をトライしてみたいが。。。


次に目玉と舌を頭の中から取り出す

コヨーテに投げてみる

食べなければ後で捨てればいい

キッチンから大き目の鍋を取り出し

ポータブル電源と電気ストーブでお湯を沸かす 


頭蓋骨を茹でたいのだが角が立派過ぎて全部が入らない

仕方がないので入れるだけいれ お玉をもってきてロゼみたいにお湯をかけ続ける


***10分後***

沸騰したお湯に約10分近く入れた後

庭の掃除用のプレッシャーワッシャーをポータブル電源につなげ

水圧で 全ての肉を頭骸骨から剥がす

脳や神経も洗い流される

それをコヨーテがパクパクしている


よし!

これは 1日乾かした後 明日 漂白して終了だ


さてと 次に取り掛かるのは小屋の作成

柱となる丸太は重すぎて持てない為 柱は枝で作成

嵐になったら潰れてしまうかもだが仕方がない

穴を掘り そこに柱となる枝

そして壁を支えるように横向きに枝

ガレージから竹網を持ってきて壁と屋根とする


日が落ちていく

夕暮れの中 ひたすら簡易的な いびつな小屋が出来上がる


男   :「。。。。。。。。。。。。。。。。」


これは後にしよう

スモーキング専用の小屋を作りたい

まー 明日でも完成させればいいか


吊るしてある鹿の前足と脇腹から少し肉を切り取る


男   :「Yo Snake(おーい 蛇)」


蛇は出された肉をその場で食べず咥えて何処かへ


男   :「Scar, Ubu, Donahue (スカー ウブー ドナヒュー)」


名前を呼ばれたコヨーテ3匹に餌をあげてから

鍋に鹿肉とショウガ、調味料、フリーズドライの野菜を少々いれに中火で煮込む

地下室のパントリーからトマトの缶詰をもってきてその中身も鍋に入れる

その間に手早く風呂に入る

本日3度目のシャワー 

でも汗かいたままベッドに行きたくない

手早くタオルで体を拭き 下着を着て

ガレージへ


”ことことことこと ぐつぐつぐつぐつ”


ガレージの外で鍋の煮える音

綺麗な月

ざわついている森


そういえばストリーマー持ってたな

明日ジンジャーエールでも作るか

そういいながらトマトベースのシチューを味見として口に入れる


男   :「ははははははは」


その味の良さに思わず笑い声が


男   :「Thank you for this meal(この食事に感謝します)

      In the name of Jesus, Able, Noah, Samson

      (イエス アベル ノア サムソンの名において)」



鍋の煮える音

風の音

そこに男の笑いとコヨーテの鳴き声のコーラスが奏でられるのであった

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