第12話: 最後の仕上げと住居の完成

「これで最後の仕上げだ……。」


 俺はリビングの中央に立ち、ぐるりと家の中を見渡した。家具はすでに揃い、快適な生活が送れる準備は整っているが、まだ細かい仕上げの部分が残っている。窓やドアの取り付け、壁の補強といった、家としての最終的な完成を迎えるための作業だ。


「まずは窓だな。」


 窓は風通しや日差しの取り込みに重要だ。俺は木材とガラス素材を用意し、「瞬間クラフト」のスキルを発動させて、窓枠を一瞬で作り出す。森の中でも明るく、居心地の良い空間にしたいから、窓は大きめに設計しておいた。太陽の光をふんだんに取り込み、外の景色を楽しめる場所にするためだ。


 窓枠にガラスをはめ込み、ぴったりと収まるのを確認する。スキルのおかげで、寸分の狂いもなく仕上がる。


「よし、これで一つ完成。次は他の部屋にも取り付けよう。」


 リビングの大きな窓を中心に、寝室や作業部屋にも小さめの窓を取り付けていく。どの部屋も、森の中にいるのを実感できるような景色を楽しめる場所に設計している。特に寝室の窓からは、朝日が差し込むように計算した。これで、毎朝気持ちの良い朝を迎えられるはずだ。


「朝日を浴びて目を覚ますなんて、贅沢な生活だよな……」


 俺は窓から差し込む光を受けながら、一人で笑ってしまった。今までの生活では、こんな自然の恩恵を感じることなんてなかった。目覚ましの音で無理やり起こされ、仕事に追われていた日々とは、まるで正反対だ。


 窓の取り付けが終わったら、次はドアだ。外界からの出入りを担う部分だから、しっかりと作り込んでおきたい。素材は木材を使い、重厚感がありながらも開け閉めがしやすいように工夫する。


「これもスキルで一瞬だな……」


 瞬間クラフトの力を使い、木材を素早く加工して、ぴったりと合うドアを作り上げる。蝶番もスムーズに動くように調整し、開閉の具合を確認する。家の外観にもしっくりと合う、自然の中に溶け込んだデザインに仕上がった。


「いい感じだな。これで安心して過ごせる。」


 ドアがしっかりと取り付けられ、家全体が守られるようになった。これで外からの風雨や、もし万が一、動物が侵入しようとしても防げるだろう。


「次は、壁の補強か……」


 家の壁は木材と石材の組み合わせで作っているが、より長持ちさせるために、補強をしておく必要がある。森の中は湿気が多いから、腐食や虫の害を防ぐための処置が必要だ。


 俺は「無限素材創出」で防虫効果のある石材を作り出し、それを壁の内側に埋め込んでいく。この石材は、森で見つけた特殊な成分を含んでいて、湿気を吸い取る効果もある。これで壁が長持ちし、快適な住環境を保てるようになるだろう。


「これで壁の補強も完璧だな……よし、次に進もう。」


 俺は壁全体を確認し、補強がしっかりと行われていることを確認した。これで家全体の耐久性がさらに向上し、長く快適に過ごせる空間が整ってきた。


 窓、ドア、壁の補強が終わると、家の中に入り、最終的なチェックを始める。リビング、寝室、作業部屋の隅々まで見渡し、何か不足しているものがないか確認する。


「……うん、これで全部揃ったな。」


 住み心地の良さそうな空間が広がっている。リビングには大きなテーブルと椅子が並び、木のぬくもりを感じられる。寝室には、柔らかい草を敷き詰めたベッドがあり、ゆっくりと休める場所が整っている。作業部屋には、広々とした机と道具が揃っていて、これからの生活に必要なものはほぼ完璧だ。


「よし、これで完璧だ。ここでのスローライフが本格的に始まるな。」


 窓から差し込む日差しが、リビング全体を明るく照らしている。外はまだ静かで、鳥のさえずりが遠くから聞こえてくる。森の中に囲まれたこの家は、まさに理想のスローライフを送るための場所だ。


「自分の手で作り上げた家……不思議な感覚だな。」


 振り返ってみると、短い期間の中でこれだけのものを作り上げたことに、少し驚いている。もちろん、スキルの力があったからこそできたことだが、それでも自分の手で家を建て、生活の基盤を整えるのは、予想以上に満足感があった。


「さあ、これからどんな生活が待ってるんだろうな……」


 俺は家の中を歩き回りながら、これからの生活を想像する。森の中での静かな暮らし、自然に囲まれたスローライフが、いよいよ本格的に始まるのだ。


 外に出て、家全体をもう一度眺める。森の緑に囲まれた家は、自然と調和したデザインで、外観もとても美しい。まるで森の一部のように静かに佇んでいるこの家が、これからの俺の生活の中心になる。


「さあ、これからはここが俺の居場所だ……」


 俺は家の前に立ち、深呼吸をする。異世界に来たばかりの頃は、どうなるか分からなかったが、今は確かにここに根を下ろし始めたという実感がある。この家での生活が楽しみで仕方ない。


「ここで、俺の新しい生活が始まる……」


 そう思いながら、俺は家の中に戻り、新しい日々への期待を胸に、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。


 家が完成し、森でのスローライフが本格的に始まる。自然と共に過ごす日々が、颯太にとって新たな生活の一部となっていく。



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