第ニの年 第二の季節
イーサンとローシュが、父と母になって二月と半分程が過ぎた。
夏のそれとは程遠いほど、僅かに太陽が世界を照らすと、降り積もった雪がキラキラと陽の光を反射して輝く。
少女は積もった雪の少し上、もうその華奢な腹部を擦ってしまいそうなほど低くを、2人の赤子を抱えて少しゆっくりと飛んでいる。
イーサンとローシュの子、まだ赤子のケセフとレーリアの2人はようやく這い回るようになった頃である。
イーサンとローシュに比べると、何故かゆっくりと成長している。
その差は、神を模って、神に造られた人間と、人間から生まれた人間との違いを見せられているようにも感じられる。
2人の名前は、少女の…夜に輝く流れ星の尾のような銀髪と、星々や太陽より煌めく金色の瞳に準えて付けられた。
名前を表すかのように男の子のケセフは銀に近い灰色の髪を、女の子のレーリアは僅かに赤みの混じった金髪をそれぞれに持って生まれた。
赤子たちの名前は、2人が生まれた次の日に、イーサンとローシュから伝えられたのだ。
そんなケセフとレーリアは、今、近くをゆっくりと流れていくように見える雪に手を伸ばして触れようとしてはは、きゃっきゃとはしゃいでいた。
「あまり雪に触れすぎてはいけないよ。手が痛くなってくるからね。あと少ししたら戻ろう。」
少女は優しく、2人を大事そうに抱きしめて微笑みながらそう声をかけた。
雪と氷が彩る世界の中でも、その微笑みは暖かさを失わなかった。
その様子が窓から見えるのを、イーサンとローシュは暖炉の前で微笑ましく見守っていた。
家の中から、彼らは少女と赤子たちが雪の中を楽しそうに飛び回るのを、暖かな視線で追っている。
「ケセフとレーリア、本当に楽しそうね。」
ローシュは、薪をくべながら静かに呟いた。
その顔には母親らしい優しさが溢れていた。
「そうだな、もう這い回るようになってから、何にでも興味を持ってる。」
イーサンも微笑んで同意する。
「…なんだか信じられないよ。あの子たちが、もうこんなに元気に動き回るなんて。この前生まれたばかりなのよ?」
「本当だね。」
二人はその後、しばらく黙ってその光景を眺めていた。
窓の外では、赤子たちの小さな手が降り始めた雪の結晶に触れ、キラキラと光る雪が風に舞い上がるたびに、彼らのはしゃぐ声が響いていた。
「でも、ケセフもレーリアも、ゆっくり成長しているって母様が言ってたわね。」
ローシュが言った。
「私たちの成長よりも、もっと時間がかかるんだな。」
「そうだね……でも、それもいいことだと僕は思うよ。」
イーサンは、ローシュの肩に手を置いた。
「つまりは…もっと長く、彼らの成長を楽しめるってことだよ。そう思わない?」
ローシュはイーサンの言葉に頷き、安心したような表情を浮かべた。
「そうね、焦らず見守っていくとしましょう。」
窓の外、少女はふわりと、踏み固められた雪の道の上に舞い降り、二人の赤子を優しく抱き上げた。
ケセフとレーリアは、まだ雪を掴もうと手を伸ばし続けているが、少女はその手を包み込み、優しく言った。
「ほら、もう雪はおしまい。また遊べるからね。」
赤子たちはまだ遊び足りない様子で口を尖らせたが、少女の優しい抱擁の中ですぐに安心し、穏やかな笑顔を浮かべた。
イーサンとローシュはそんな彼らを見ながら、互いに目を合わせて笑みを浮かべた。
外では雪がしんしんと降り続け、家の中は赤子たちの笑い声と、家族の静かな幸せに包まれていた。
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