第二の年 第一の季節

「ローシュ、イーサン、よく頑張ったね。さあ、その子たちをこちらに。」


そう言うと、少女はローシュの腕からそっと赤子たちを受け取り、その小さな体を両手で包み込んだーーー




そして少女は、赤ん坊を抱きかかえながら笑みを浮かべ、優しく目を閉じた。


数瞬して、再び少女が瞳を露わにすると、金色に輝く瞳の色と同じ色の光が辺りを包んだ。


その光の中、少女は自身の、銀色の長い髪をまとめた瑠璃色の石を嵌め込んだ美しい髪飾りと、

胸元の羽をあしらった首飾りにに手を触れ、深い呼吸を一つ。


そうして少女は厳かに、しかしどこか穏やかさを感じさせる声色で言葉を紡ぎ始めた。


その言葉は、祝福の呪文とも言えるものであり、少女がかつて神から授かった「知識」が与えた言葉。




ーーー最初に「知識」で知った時には、全身が粟立った。


生命に祝福を与え、自らの加護を授けるということ。


神の野郎に与えられた力、それは少女にとって重すぎるものだった。



まるでこれでは私が神にでもなったようじゃないか!

と。



そう思ったのだ。




しかし、イーサンにローシュと赤子たちの無事を頼まれた…頼まれてしまった。


必死に、床に額がつくほど…文字通り平身低頭、少女に祈りを捧げたのだ。


少女の銀色に輝く髪に合うように作った深い瑠璃色に輝く石を嵌め込んだ髪飾りと、


イーサンの大切にしていた、ローシュからの贈り物である羽の首飾りを震える手で差し出しながら、だ。



そこまでされては断りきれず、お産がうまくいく奇跡と、


動物たちにしたものよりも盛大に、祈りを捧げる決意を固めたーーー




それは命を守り、導くための祈りだった。



「この命に、天と私の加護と世界の祝福を授けよう。

我が子らは、健やかに、強く、愛し、愛され、守り、守られ、誰かの光に、そうなりますように。」


少女の言葉に呼応するように、赤ん坊を包む光が一瞬だけ強まった。


その輝きはローシュとイーサンにも届き、まるで家全体を抱きしめるかのように穏やかな、心の底から安堵をもたらすものだった。


少女が放つ光が落ち着いた頃、


「母様…今のは?奇跡は対価無しじゃ…」


イーサンが驚いたように尋ねる。


「大丈夫。これはこの子たちの未来に、幸運と守護を与えるための祝福だよ。

奇跡は起こしてないさ。」


ローシュにバレないよう、イーサンに目配せをしたあと、少女は微笑んで、赤ん坊をそっとローシュに返した。


イーサンはそのことに気づいて涙ぐんだが、すぐに笑顔を取り戻し、少女に礼を言った。


ローシュは赤ん坊を抱きしめながら、温かな光に包まれたような安堵を感じていた。


「ありがとう…母様…本当に、ありがとう。」


「これからはあなたたちが、この子を愛し、守っていくんだ。

大変なこともたくさんあるけれど、きっと二人なら大丈夫。

私より上手く育てられるさ…君たちは私が育てなくてもうまく育ってくれたけどね。」


少女がそう言うと、二人は思わず笑いだしてしまった。


「そんなことないよ母様ーーー」



その笑い声は、家の中に静かに響き渡り、暖かな空気に包まれたその光景は、まるで絵画のようだった。





家の外では、紅葉が風に舞い、静かに夜空へと飛んでいく。


部屋の中から漏れる光が、外の景色に温かな輝きを与え、その光は夜空に煌めく星々と溶け合っていく。




少女は窓辺に立ち、夜空を見上げた。

満天の星が瞬き、時折流れ星が尾を引いて落ちていく。


それはまるで、世界がこの新たな命を祝福しているかのようだった。


彼女は静かに目を閉じ、心の中で未来を思い描いた。新しい家族、そしてこれからの旅路。


どんな困難が待ち受けていようとも、この家族ならば、きっと乗り越えられるだろう。


優しい微笑みを浮かべながら、少女は再び窓の外を見つめた。


夜風がそっと、少女の束ねた髪の、その透き通る月の光のような毛先を揺らし、彼女は静かに未来への期待を抱いていた。



そして彼女は、未来への静かな期待を胸に抱きながら、優しい微笑みを浮かべていた。

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