第十二の月

夏が終わり、朝晩には涼しさを感じるようになり、季節の移り変わりを肌で感じる頃だった。


イーサンは、まだ夜も更けぬうちから出かけ、ローシュのために海の魚を採りにいった。


近頃は、以前のようにもじもじとすることは減り、ローシュと、新たな命を守る為に決意を固め、

立ち振る舞いは体つきに相応しく、名実共に偉丈夫となっていた。


少女とローシュは、静かな時間の中で、新しく生まれてくる命のために準備をしていた。


少女はローシュと共に、綿と山羊の毛を使って寝具や寝巻き、おくるみを手作りしていた。


ローシュのお腹は日に日に大きくなり、その変化に伴い、以前の色香を漂わせるような雰囲気は薄れ、代わりに穏やかな母性があふれ出していた。


少女はその変化を微笑ましく見守りながら、ローシュの中に宿る命が力強く育まれているのを感じていた。


特に彼女の目には、ローシュのお腹の中で輝く二つの光が見えていた。


まるで新たな命がその光を通じて、生まれる準備を進めているかのように、活力に満ちた光が日毎に強く輝いている。



それは、命の躍動そのものだった。



「元気に育っているね…」


少女はローシュの大きくなったお腹をそっと撫でながら、未来への期待と希望に満ちた声でそう言った。


ローシュは微笑みを浮かべ、手元の糸に集中しながら答える。「ええ、毎日少しずつ重く感じるの。でも、不思議と怖くはないわ。

この子たちがちゃんと生まれてきてくれるって、何となく分かるの。」


その言葉を聞いて、少女も静かに頷いた。


ローシュの中で新しい命が育まれているのを間近に感じ、その成長と共に自分自身もまた新たな家族を迎える準備ができていることを実感していた。


日々、準備は着実に進んでいく。


針仕事も得意な少女は、ローシュと新たな命のために作った寝具やおくるみが次々と完成していく様子を見て、心の中に温かな満足感を感じていた。


季節の変わり目と共に、家族の形もまた静かに、そして確かに変わろうとしていた。


新しい命の到来が近づく中、少女とローシュはその日を心待ちにしながら、母と娘の絆を深めていった。


そうして、この世界の最初の年が終わっていくのであった。

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