第六の月

少女が草原の青草の上に座り、森の方を眺めて待っていると、


すぐに森の動物や鳥、虫やトカゲの類まで生まれた子を連れて列を成した。


それぞれに、お気に入りの青草や自慢の毛、よく耕された土など様々なものを、

出来る限りの方法で持って、整然と待っていた。



皆少女に子供をひと目見てもらいに来ているのだ。



誰が教えたわけでもないのに、どうしてこんなことになったのやら…


と、そう思いながら、そんなそぶりは努めて出さぬようにしながら、


少女は生まれた子供達に、その親に向けて手をかざした。


「よく来たね。

…いや、ようこそ世界へ。

そしてお母さん達困難な産みの苦しみをよく乗り越えたね。よく頑張ったね。

わたしはあなた方を祝福しよう。」


そう言葉を紡ぐと、彼女の手から柔らかな、淡く輝く、若草色のような光が溢れ出し、その光は列を成した動物たちやその子供たちに優しく降り注いだ。



光はまるで春の温かな陽射しのように、その場の命を包み込むようにして輝き、それに応えるように森の中に安らぎと喜びが広がっていった。



動物たちは静かに頭を垂れ、感謝のような仕草を見せながら、次々に祝福を受けて、それぞれにお礼の品を置いていった。




あれは春の始め、まだ日も明けきっていない頃だった。


家の窓をコツコツとノックする音がして、少女が窓を開けて見てみると、そこには鳩の夫婦が巣ごと雛をその嘴で器用に運んできていたのだ。


さらには、自分たちの胸元の最も柔らかく形の良い羽根をそっと差し出していた。



まるで供物のように。



あまりに奇妙な光景に、少女はどう反応していいのかわからず、呆気に取られていた。



すると、ローシュが横から顔を出して言った。


「きっと子供たちを見てもらいたかったんだよ。母様、彼らにお祝いの言葉をかけてやってよ。」



「お祝い…?」


少女は戸惑った。


お祝いなどしたことがないし、どうすれば良いのかもわからなかった。


しかし、その時、ふと頭の中に「生誕の喜びと産みの困難への労いをかけるべきだ」という考えが自然と浮かんできた。


まるで昔から知っていたかのように。


彼女はその考えに従い、森の動物たちにしたように、祝福の言葉を鳩の家族にかけ、光を与えた。





それが最初だった。





おそらく、その鳩の家族から噂が広がったのだろう。


その翌日から、今日のように動物たちが列を成してやって来るようになったのだ。


祝福は絶え間なく求められ、次々に訪れる動物たちに対応する毎日が続いた。


これは一体いつまで続くんだろう…



動物たちのお礼の品を、奇跡の対価の山を眺めながら、少女はそう思わざるを得なかった。



彼女が新たな悩みを抱えていると知ってか知らずか、動物たちは参拝を続け、かくして少女は新たな役割を担うことになった。


そして、その役割は春の間…しばらく続いたのであった。

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