第五の日
空のはるか上。
雲を足元に僅かに望む高さまでゆっくりと浮かび上がり、
少女は陽光に照らされ、そこに広がる景色を眺めていた。
その時、すぐ近くから声が響いた。
生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。
「生き物…生き物だって?」
その言葉に驚愕した少女は、急ぎ地上へ戻ろうとした。
声の正体が近くにいると感じられていたが、それ以上に「生き物」という言葉が彼女を動揺させたのだ。
そして、雲の少し下まで降りたその時、突然何かが少女の顔にぶつかった。
それは、一対の翼を持ち、白い羽毛に覆われた鳥だった。
丸い目は白目が見えず、僅かに曲線を描く短い嘴が特徴的なその姿は、紛れもなく現実の鳥であった。
やはり、ここは死後の世界なんかじゃない…
文句を言うように高い声で鳴き飛び去っていく鳥を見送りながら、少女は確信した。
薄々感じ取っていたものの、このような形で確証を得るとは思わなかった。
そもそも、こんな場所に自分がいること自体が、すべて思いもよらぬことだったのだが。
空から見下ろすと、広大な湖のような水面の中に、大きな影がうごめいているのが見えた。
少女は、思考が追いつかなくなりながらも、先ほどぶつけた顔を摩りつつ地上へと急いで戻る。
その途中、またもや少し遠くから声が響いた。
産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。
夕べがあり、朝があった。
第五の日であった。
世界はあまりにも――
あまりにも、生に満ち溢れていた。
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