3話

 必死に逃げる僕は、一つとして振り返らずに走り続けた。風のように速く、しかし熊のように猛々しく走った。僕は必死に生にしがみつこうとした、1秒が、10秒が、何分にも、何十分にも、そして何時間にも感じられるようだった。

 ただただ、僕は必死だった、あの不思議な隕石に殺されまいと、夢を潰されまいと。ただその一心であった、長い長い時間走った、本当に長い時間を走り抜いた。僕は隕石の落ちる様さえ確認せず、ただただ、走り続けたのだ。

 いつしか、漸く力尽きた私は、指一本動かせぬ程に疲れ果てて倒れた。瞼は何か錘が付けられているかの様に、意思も関係なく重く閉じられ、襲いくる睡魔に抵抗する意思させ思わせずに、私は気絶する様に眠った。





「うっ」


 朝の日の、酷い日差しに目をやられて、僕は再び意識を取り戻した。閃光の様な日差しが、瞼を貫通して僕の眼球に直撃したのだ。

 酷い目覚めに、若干不快になりながら起きあがると、何か胸の辺りに硬質な異物がある事に気づいた。自分の服の下を弄り、異物を取り出して見てみると、普通とは違う色をした隕石らしきペンダントが、僕の首にかかっていた。


 不思議な色の美しい隕石が付けられたそれは、僕の視線を暫く離さなかった。その透き通る様な美しさと、輝きは、未だかつて見た事の無いものだった。


「なんなんだ、これは」


 全くと言って見覚えの無いペンダントだ。


 僕はペンダントなど持っていないし、拾った覚えもない、さっきまでなかった筈だし、もしかして、寝てる間に誰かが僕の首にかけて行ったのかもしれない。

 こんな広い荒野で、倒れてる人にペンダントをかけて去って行ったんだろうか。不思議な物だ。


今更だけど、今は、朝なんだろうか?

僕はここで、こんななんでも無い薄っぺらい格好で、一晩中寝てしまったのか?

だとしたら、どうして生きてるんだろうか?

 ここは荒野だ、昼は暑く(熱く)たって、夜は凍える程寒い、それをこんな無防備な格好で寝てて生き延びたってどう言う事なんだろうか。


色々とおかしい事が多過ぎて、頭が回らない。


そう思い、僕は深呼吸をすると、またもやおかしなものを見つけた。


「なんだこれ?」


 僕の隣には、いつだか指示役の男らが食べていた食べていたパンと言う食べものと、僕には見覚えのない水袋が置いてあった。

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