第22話 どうか僕を見付けて

 彼は唇を三日月みたいにして柔らかく微笑んだ。

「時折、人は月に、星に話しかけてくれるでしょう。

 月見をしながらお酒を呑む時や

 眠れない理由があるとき。

 彼らはその言葉に応えたくて、必死に輝くんです。

 それこそ、すぐそばに行ってお返事をしたいぐらい。

 だから、せめて気付いてほしくて、ひたすら輝くんです」

 なんだか、今にも泣きだしそうな声をしていた。

 私がそう見ているせいか。

 彼は言った。

「おじょうさん。どうか僕を見付けて……ってね」

 彼があんまりにも丁寧に言葉を選んでいるようだから

 私は彼の言葉に惹きこまれていくようだった。

 ああ、本当にそうなら……。

 でも、でも……。

「もしそうなら、お月様は私に愛想を尽かしたのかしら。

 だって、今夜は私に会ってくれないんだもの」

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