第18話 まるで月が欠けていくように
少し心細くなってきた私は
手に握っていた星のペンダントの感触を確かめた。
私にとって、これはお守りだった。
昔、小学生の絵画展で大賞をとったことのお祝いに
弟が小遣いで買ってくれた大切なものだから。
都会に出てからは絵を描く機会が減ってしまったが。
幼い日の私は、夜空を描くのが好きだった。
月と星が綺麗に映るこの先の公園へ行くために
弟を連れて、よく家を抜け出してきたものだ。
私は月を見て、弟は星を見ていた。
私は絵を描くために。弟は小説を書くために。
それはとても幸せな時間だった。
弟が不幸にも事故で先立ってからは
この「幸せだった」という言葉だけが記憶に残って
私の心は、日に日に抜け落ちていくようだった。
まるで月が欠けていくように。
私が弟を連れ出して、夜遊びなどしなければと。
償いきれない罪の後悔が、毎夜私を苦しめている。
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