第14話 月と弱音

「なんだい。僕が話すことにはビックリしないくせに」

「だって、それは……」

 少年が何か言いかけたかと思うと

 とたんに目の輝きがスーッとかげって。

 ベンチの上で小さく丸まってしまいました。

「みんなして僕をバカにするんだ」

 くっつけたヒザの中に顔をうずめながら

 少年は寂しそうに言います。

「絵の中に入って、青い絵の具の河を船でわたる。

 音を知らない空の星が『きらきら星』に涙を流す。

 一冊の本が、人に恋をする。

 そんな物語があったって、いいじゃないか……」

「へえ。じゃあ、今は何を書いているの?」

「怖いやつだよ。罪悪感とか、後悔とか」

「暗いなあ」

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