第11話 空に浮かぶ月

「僕の声が聞こえるの?」

「聞こえるよ」

 月は、たまらなく嬉しくなりました。

 それから、彼は少女にお願いをしたのです。

「ある人に、君の曲を聞かせてほしいんだ」

「どうして?」

「だって、僕が言いたいことを

 いま君が全部歌ってくれていたから……」

「そんなのダメだよ」

 少女はプイッとそっぽを向いてしまいました。

 月は、なぜいけないのか分かりません。

 彼女は、さも当たり前のように言いました。

「その気持ちは自分で伝えに行かなきゃ」

 彼は困りはててしまいます。

「無理だよ。だって、僕は空に浮かぶ月なんだ」

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