第10話 月とギターと歌声と

「――ひときわ目をひいた。アナタの静かな横顔」

 少女の歌声が

 遠くに浮かぶ月の心から

 あの流れ星のことを思い出させました。

「――一瞬のときめきで、アナタを選んでしまった」

 月の心を、少女が代わりに歌ってくれているようでした。

 公園のそばを流れるせせらぎは

 きっと泣いてしまった月の涙だったのでしょう。

 こんなふうに、想いを声にできたなら……。

 やがて演奏が終わると、月は思わずといった感じで

「ブラボー!」と声を上げます。

 そう褒めたたえてから、彼はとてもおどろきました。

 ――いま、僕は声を出すことができたのだろうか?

 ――いや、そんなはずはない……。

 月は少し残念に思いながらも

 ステキな曲を聞かせてくれた少女に

 心よりの祝福をしました。

 すると、やっぱり少女もまた振り返って

「お月様に褒められちゃった」

 はにかんだ可愛らしい笑顔を月に向けて

 嬉しそうにそう言ったのでした。

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