第5話 二人目の客

 ある日の夜。月は半分に欠けていました。

 もう一方の部分は、どこかに行ってしまったような。

 彼の心は、ありのまま、夜空に浮かんでいます。

 月は娘のことが気がかりでした。

 しかし、あれから数日が経ちましたが

 彼女がまた公園に現れることはありませんでした。

 その代わりに、公園の通りのやみから

 ふとオレンジ色の人工灯が近づいてきました。

 ……ブゥーン……とエンジンの音。

 白の軽トラが、公園の入口のあたりで停まりました。

 すると、何やら

 おぼつかない足取りの青年が、車内から下りてきます。

 月は冷ややかな眼差しで彼を見ていました。

 男は助手席からパンパンに詰まったビニル袋を取って

 それから、布にていねいに包まれた

 大きな板みたいなものを脇に抱えると

 ヨタヨタと、あっちこっちへフラつきながら

 公園のベンチにドッカリと腰をかけました。

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