第4話 月の声は届かない

 そうして月は、雲に隠れてから

 またヒッソリと娘を見守ることにしました。

 まだずっと彼女は夜空を見上げています。

 その顔のなんと悲しげなことか。

 月は、娘をなんとか元気にしたくてこう言いました。

 ――君のほうがずっと綺麗だよ。

 でも、彼の言葉が娘に聞こえることはありません。

 ときおり人々は、星に、月に、声をかけてきます。

 そのたんびに彼らは、さびしいような

 くやしいような気持ちでいっぱいになるのです。

「ねえ、お月様。アナタがもしも言葉を話せたら

 いつか、お返事をちょうだいね」

 娘の声が、どんどん消え入るように小さくなります。

 返事をしない自分に、むなしく思ったのかも。

 彼は今にも、ベンチに座る彼女のとなりへ行って

 刻一刻と、つのりゆくこの気持ちを伝えたくて……。

 月は胸が張りさけそうでした。

 娘が夜のやみに帰ってゆくまで

 月は、彼女のいる公園を照らし続けていました。

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