疑問

 行っておいで。

 その言葉を夜菜様から受けた僕はダンジョンから元の世界の方に戻ってきていた。

 神格持ちの魔物たちが荒れ狂い、大きな被害を出している、自分が生まれ育った町へと。


「……どういう原理なんだ」


 ここへと戻ってきた方法。

 それは夜菜様が問答無用で僕をダンジョンから、地上に転移させるような形だった……うーん。あの状態の夜菜様からはほとんど力を感じなかったと思うんだけど……こんなことが出来たんだね。


「……いや、こんなことを話している場合でもないか」


 夜菜様だ。

 何かあるのだろう。ここで僕がやるべきはその夜菜様のことを思い図ることじゃない。

 そんな不敬、許されることじゃないし、僕がやるべき事はもっと他にある。


「ふぅー」


 ダンジョンから神社に、無事戻ってこれた僕はその場で深呼吸を行う。

 


「千夜っ!!!」



 なんてことをしていた中で、僕はいきなり自分の名前を呼ばれると共に、全身に衝撃を受ける。


「……輝夜っ」


 僕の名を呼び、そのまま抱き着いてきた人物。

 それは輝夜だった。


「大丈夫!?何か、何か体に異常があったりしない?!」


「い、いや……大丈夫だけど」


 僕の体をぺたぺたと触りながら、声を張り上げる輝夜を前に、僕は困惑の言葉を返す。

 何で、こんなにも輝夜が動揺しているのか。

 それが僕にはわからなかった。


「そ、それなら……良かった」


「いきなりどうしたのよ。千夜が!千夜が!なんていきなり叫び出して神社の方に飛びだして行って……ほんと、びっくりしたのよ?」


「んっ……心配した」


 僕の言葉を聞いて、ひとまずほっとした息を漏らす輝夜。

 その輝夜の元に駆け寄ってくる水樹と時雨の口より語られるのは、姉たちであってもあまり事情を把握出来ていないということだった。


「二人も把握していないの?」


「えぇ、そうね。いきなり飛び出していってしまったから……」


「んっ。それじゃあ、僕に何の用だったの?輝夜」


 事情をわかっていない水樹と時雨に聞いても仕方ない。

 僕はこの騒ぎの中心にいる輝夜に対し、疑問の声を向けるのだった。


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