神々廻夜菜。

 そう名乗る天之御中主神様を前にする僕はただただその口より告げられる言葉を待ち続ける。


「どう解決してもらうか……その方法なのだけど、純粋にもっとあなたに強くなってもらおうと思うの」


「もっと強く、ですか」


「えぇ、そうよ。それが一番美しく、スマートだとは思わないかしら?」


「確かにそうかもしれませんが……強くなるための術があるのですか?」


「えぇ、あるわ。貴方、幼少期は私の体から漏れ出していた神気を食べて過ごしていたわね?」


「……えぇ、そうですね」


 神気……夜菜様の体から染み出ていた液体を啜って生きてきたことを言っているのかな。おそらくは。


「あれのおかげで、貴方の中には神としての要素が着実に溜まっていたのよ。今はまだ、人の姿として保つために無意識下でその力を自分の身に秘めているような状況ではあるけどね?」


「……そう、何ですか?」


「えぇ、そうなのよ。亜神。その存在は知っているよね?」


「はい。神としての力を有する存在、でしたよね?」


 亜神。

 この世界に神様が居るなら、それもいるでしょう。

 僕の神社にはその存在が確かに伝聞で残されている。


「えぇ、そうよ。正解。そこにまで至れば、周りの魔物たちも倒せるでしょうし、地球へのダメージも最小限で済むはずよ。かなり美味しい話だとは思わない?」


「そう、ですね」


 僕は夜菜様の言葉に頷く。


「私が貴方の中にある亜神に至るために、その壁として機能しているものを壊してあげるわ。これにより、貴方は願い、力を解放するだけで亜神になれるはずよ。さぁ、頭を出して」


「わかりました」


 そして、続く夜菜様の言葉にも頷き、僕は静かに頭を下げる。


「それじゃあ、触れますね」


 その僕の頭へと夜菜様がその手でお触れになる。


「───」


 夜菜様が何かを呟いた後……確かに、自分の中の何かが音を立てて壊れたことを察する。


「さぁ、行っておいで。私の神主」


 次に僕が顔を上げた時。

 自分の視界で捉えたのは、何処かいたずらっ子のような笑みを浮かべている夜菜様の姿だった───。

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