新しい具現領域

 新しくなった具現領域。

 その力はあまりにも強力だった。

 論理上、僕の具現領域はもう何でも出来る。やろうと思えば、ブラックホールを作ろうというのも出来るのだ。

 とはいえ、ブラックホールをここで作り出せば僕も巻き込まれて死ぬ。だからこそ、制約ばかりのスキルだったのだ。

 それを解消したのが新しい具現領域だ。


「具現領域」


 相手の世界にだけ、具現領域を展開する。

 この空間を変えるのではなく、相手の周りだけ。これまで多様していた海の展開。

 それは僕が息出来なくなるという問題を抱えていたわけだが、それを相手の世界限定にすれば、もう僕は関係ない。

 一方的に具現領域を押し付けることが出来るのだ。


「……むっ、これは無理か」


 とはいえ、何でもかんでも押し付けられるわけじゃなかった。

 強者相手には押し付けられるものにも限界があった。

 初手で敵の世界にブラックホールでも作り出し、そのまま勝利を飾れると思ったのだが……そううまくはいかなかった。


「うぅん、いけるか、どうかの基準が欲しいな」


 僕は戦闘の中で、色々と新しい具現領域の性能を確かめていく。


「斬り落とした部分くらいなら消せるか」


 自分の方に差し向けられた九尾の尾。

 それを剣で斬り落とした僕はそのまま切り取った尾に向かって具現領域を発動。

 しっかりとそれは成功し、自分の隣を進んでいた尾は忽然とその姿を消滅させる。


「……くぅん?」


「悪いけど、再生は出来ないよ。君の尾はブラックホールの中。再生なんて無理……君に尾が生えていたという事実はブラックホールに呑み込まれ、消えてしまった……ここまで凶悪な性能になるとは思っていなかったけどね?」


 そして、その尾はどんな再生能力があったとしても、戻ってくるは絶対にありえない。


「よし、このまま細切れにしてやろう」


 前回はあれだけ苦戦させられた九尾。

 それを前に僕は一人、不敵な笑みと共に付喪神を構えるのだった。

 今の僕なら、問題なく勝てる、そんな確信があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る