助言に従って
戻ってきた。
戻って来てしまった。
まだ、知りたいことの多くが知れていないままだというのに。
「せ、千夜……?」
呆然と、この場に立ち尽くしてしまった僕に対して、自分の前にいる甘夏が疑問の言葉を挟む。
「須比智邇神様の力を借りることは、出来たの?」
「……あぁ、聞けてきたよ」
しばらく呆けていた僕は甘夏の言葉に答える。
「ちゃんと須比智邇神様からのアドバイスを聞けた。これで、ある程度自分のやるべきことは定まったよ」
まだまだ聞きたいことはあった。
でも、それはきっとまた後で、ということなのだろう。
須比智邇神様が言うには、神社のダンジョンを踏破すればいいんだそうだ。
どうやって、神様から最大限力を借りられるのか……それはわからないが、その答えは神社の最下層の人が把握してくれているのだろう。
「……うん、使える」
そして、須比智邇神様の言う通り、僕の具現領域も一皮むけてくれたような感じもあった。
「うん。確かにこれならいけるけど」
僕は軽く自分の体を動かしながら、色々と確認し、勝手に一人で納得を進めていく。
「大丈夫、なの?」
「うん。大丈夫、甘夏。おかげで助かったよ」
「それならよかったわ……それでこれから何を?」
「まずは神様からの助言通りに動く。須比智邇神様は神社の最下層にまで降りるよう僕に話していたからね。とりあえず、僕はそれを目指す。それが出来るほどの力は、須比智邇神様から頂けた」
「じゃあ、頑張ってね」
「うん。任せて」
僕は甘夏の言葉に頷き、そのまま彼女へと背を向けて、神社のダンジョンへと入るための入り口に近づいていく。
「開け」
神社のダンジョンに入るための入り口は割と多くある。
僕は適当な場所で呪文を唱え、神社のダンジョンに入るための入り口を開かせる。
「じゃあ、行ってくる」
僕が神社のダンジョンへと飛び込もうとした瞬間に。
「待ってっ!」
何故か、水樹と時雨に連れられた輝夜が僕の前に姿を現し、焦ったような口調で僕に向かって叫ぶ。
「ごめん、待っている暇はないから」
それでも、僕はそれを見なかったことにして、神社の中のダンジョンへと入っていくのだった。
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