帰還
青龍に乗り、牧野さんと日本の方に戻ってきた僕は。
「ガァァァァァァァアアアアアアアアアッ!」
「こぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおんッ!」
『───ッ』
日本で多数の魔物たちが大暴れしているような状況を前にすることとなっていた。
「これは、本当にひどいな」
「ですね」
僕は自分の隣にいる牧野さんの言葉に頷く。
確かに、酷い状況だった。日本の冒険者たちも何とか被害を抑えようと努力しているが、その努力のほとんどが焼け石に水となってしまっている。
「これが日本の現状だと思いたくないな」
「そうですね」
魔物たちが暴れ、街が荒れ果て、冒険者たちが絶望する。
それが今の日本の光景だ。
徹底された国単位での避難訓練の賜物より、民間人は避難しているのでまだ被害は大きくなっていなさそうに見えるが、これも時間の問題でしかないだろう。
「早急に対処しないとな」
「そうですね。早急に対応しなければ、致命的な傷を負いかねません」
夏瑠総理がこれ以上ないほどに慌てていた理由もよくわかる。
「自分の仲間たちがここら辺にいるはずだ。ここら辺で降りさせてもらう」
「はい。お気をつけて」
「あぁ、君もな」
日本の上空を駆け抜ける青龍の上から牧野さんは飛び降り、パラシュートなどもなしで一直線に地上の方へと降りていく。
トップの冒険者なら、ここからの距離で落ちても何の問題もない……やっぱり、ちゃんと人間を辞めているよねぇ。
「さて、と」
一人となった僕は更に青龍の速度を上げ、一直線に自分の神社の方に向かって行く。
「……これは無理だ」
見ればわかる。
今、動き出している者の中には僕が対処は不可能と思いながら……それでも、動くことはないだろうと踏んでいた者たちまでいる。
相手は神々に一歩、近いような者たち。神格持ちだ。
僕じゃ勝てないし、どんな人であっても勝てない。
「……行けるかなぁ」
希望があるとするなら、今、暴れている魔物たちが近づいているような存在。
唯一、日本にまだ、残ってくださっている神様たちの力を借りる他ない。
「荒ぶる神……様、どうか、お助けを」
僕は一直線に、自分の神社へと向かっていた。
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