連絡

 スマホが鳴り響き、こちらへと聞こえてきた電話を知らせる一つの音。

 

「なんでしょう?」


「なんだ?」


 それに、僕と牧野さんが同時に反応する。

 僕はスマホを取り出し、その画面に表示されている通話相手を確認する。電話の相手は日本政府。つまりは、夏瑠総理からだった。


「牧野さん?」


 それを確認した僕は直ちに牧野さんの方へと視線を送る。


「俺は自分のパーティーメンバーからだ」


「なるほど」


 牧野さんの言葉に頷いた僕は迷うことなく電話を取る。


「もしもし、千夜です」


『千夜くんかっ!すぐに出てくれて助かる!』


「……自分に何の用でしょうか?」


 夏瑠総理と言えば、ゆったりと、丁寧な言葉を行うようなイメージがある。 

 だが、今、自分と電話の繋がっている夏瑠総理の口調はかなり荒っぽいものとなっており、敬語も外れている。

 その事実に少しばかり眉を顰めながら、僕は次の言葉を尋ねる。


『緊急事態だ。今すぐ、直ちに日本へと帰って来てくれ。我が国に残っていた魔物たちが一斉に動き出した。外国も大事だが、一番は我が国である。自国を守ることを最優先とせねば」


「えっ……?」


 自国内にいた魔物たちが動き出した……つまり、これまで対処が難しいからと放置していた天空より降ってきた魔物たちが動き出したということ?

 大問題じゃないか。


『ガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』


「ぐぬぅ……ッ」


 僕が会然としていた中でも、スマホの方からは魔物の咆哮と夏瑠総理の焦りの声が聞こえてくる。


「……あら~」


 本当に、不味そうな状況だった。


「牧野さん」


 そんな中で、僕は自分の隣にいる牧野さんの方に視線を送る。


「日本の魔物が動き出したという報告は聞いたか?」


「夏瑠総理から。牧野さんはお仲間さんから?」


「あぁ、そうだ。帰るぞ……他の地方の解放は他の人達に任せよう」


「はい……夏瑠総理。直ちに帰ります。少々お待ちください」


『あぁ、頼むぞ……本当に』


 僕たちはちょうどヨーロッパを解放したところで日本の方に戻ることが決まったのだった。

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