研究室

 魔物からの報告を受けてやってきた場所。

 そこには確かに、地下へと行くための一つの階段があった。


「へぇー、なるほどね。確かにあったわ……うし、それじゃあ、行ってみるか」


 僕は一切迷うことなくその階段を下りていく。

 恐らくはもう当分、フランスに来ることはないと思う。

 だからこそ、ここで得られるであろう知識というのは貴重になってくるはず……まぁ、僕がそんなフランスの情報を得る必要があるか、と聞かれると別にないわけだけど。


「うーん、普通に魔物の襲撃を受けただけ……と、言った感じでもなさそうだな」


 地下に通じる階段を下りていく僕はここの状況を見て、そんなことを思いながら進んでいく。


「内部から、何かが来たように見える……」


 当初の楽観的な気持ちから、警戒心を強めていく僕はしっかりと自分の横に魔物を控えさせた状態で降りていく。


「……わぁーお」


 そして、階段を降り切った先にあったもの。

 それはかなり広大な研究所であった。

 血痕に書類が散らばっているかなり荒れ果てた研究所であるが、それでも広さは僕が高校の体育館くらいはあり、数多くの壊れたかなり大きい大型の培養カプセルが並んでいた。

 もう既にこの研究所は使えないだろうが、その痕跡だけでもここでかなり大規模な実験を行っていたことがわかる。

 素人目から見てもね。


「もしかして、たまたまで大当たりを引き当てた?」


 明らかに民間人が拵えたものじゃない……せめて、大企業クラス。

 とはいえ、こんな研究所を作りそうなフランスの企業はなさそうだけどね、日本企業じゃあるまいし。


「なるほどねぇ……なるほど」


 国がここまで荒れ果て、その最後の望みとして他国の人間に頭を擦り付けて頼み込んだ中でもまだ、フランス政府が隠したかった秘密の研究所。

 はたまた、フランス政府も把握していない何者かが作り上げていたものか。

 そのどちらか、それとも、そのどちらかでもないか。


「ふぅむ……」

 

 今の状態をパッと見るだけではわからない。

 落ちている書類だって日本語で書かれているわけじゃない……ここが何なのか、調査するのはそこそこ時間を必要になると思う。

 

「……調査していくか」


 とはいえ、現在のフランスでの戦いにおいて、さほど僕の存在は重要ではない。

 魔物たちがいてさえくれれば何とかなる。

 

「君たち、まかせたよ」


「こぉぉぉぉぉんっ!」


 僕はフランス内部、並びにその先であるドイツの内部にいる魔物の殲滅を自分の召喚した魔物たちに任せ、一人、ここの調査を始めるのだった。

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