アメリカ

 アメリカ合衆国。

 この国は先進諸国でありながら、実力社会の弊害である困窮者が普通に地面へと多く転がっているような国だ。

 困窮者による治安悪化、許容される銃社会。

 それらが積み重なるアメリカ合衆国は個人が強さを求める傾向にあり、それに伴い、この迷宮大氾濫の中にあっても、市民の一人一人がせっせと魔物と戦っていた。


「……そんなに数いないな」


 だからこそ、アメリカ合衆国内にはもうあまり魔物が残っていなかった。

 市民の一人一人がしっかりと魔物を倒して、数を減らしてくれていたのだ。


「雑魚狩りが僕の真骨頂なんだけどなぁ……」


 アメリカ政府より提供してもらった人工衛星を活用した監視システム。

 それを利用し、空からアメリカにいる魔物のことを確認している僕はブツブツと独り言を漏らしながら作業を行っていく。

 やることは単純。

 人工衛星の捉えた魔物へと自分の召喚した魔物をぶつけるだけの簡単な作業だ。


「いちばん強いヤツは既に対処してある」


 ニューヨークを占拠している強力な魔物には牧野さん率いるパーティーと、アメリカの精鋭たちが向かっている。

 ここは僕が魔物を派遣するまでもないだろう。


「……僕が行かないとまずいところはあるかな?」


 自分の魔物は万能じゃない。数がいるだけ。

 強力な魔物が相手だと、どれだけ数をぶつけても蹂躙されるだけ。

 ちゃんと勝てるかどうかも考えて、派兵する必要がある。

 その上で、僕が直々に出向いて戦う必要があるかどうかも考える必要がある。


「んー、ここは大丈夫……護持ラを突撃させておけば、最悪何とかなるだろう。街が一つ、灰燼に消すくらいであればそんな大したことじゃないよね」


 自分の魔物の中にはアホみたいにデカい奴もいる。

 そんな僕に協力を求めたのだから、最悪の結果になることも想定しているよね。


「それで、えっと……」


 色々と視線を動かしていく僕は最後に、一つの魔物の方に視線を止める。


「あいつには、僕がちゃんと行かないと無理かなぁ……」


 そんな中で、唯一、僕が行かなければ勝てなそうな魔物を眺めながら、独り言を漏らすのだった。

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