経過

 僕の作り出した絶対零度の空間内での争い。

 九尾がその体を冷気によってまともに動かせずいる中で、その前に立つ時雨さんが刀を振るい、九尾の体に多くの傷をつけていく。

 だが、途中で僕が冷気へと耐え切れずに領域を変化。

 僕が冷気よって冷え切った体を温め、再び動けるような状態とするまでに時雨さんは九尾の手によって窮地へと追いやられ、途中で自分と交代した。

 この一連の中で、僕もしっかりと絶対零度の中であっても動ける魔物を召喚していたが、全滅してしまった。


 再び僕と九尾は向き合って矛を混ぜ合い、また、まったくもって同じような構図となった。

 九尾は己の尾で僕の包囲網を作り、こちらは強引に突き破った。

 そこでまた時雨さんと交代。

 今度作り出したのは通常の数十倍という常軌を逸した高重力空間だった。

 

 僕の作り出した高重力空間内での争い。

 時雨さんが重力のせいで動きの鈍る九尾を襲い、また、その途中で僕が耐え切れなくなって領域を変化。

 自分がダメージから回復している間に時雨さんは九尾の手によって窮地へと追いやられ、途中で自分と交代する。

 この一連の中で、僕もしっかりと高重力空間の中であっても動ける魔物を召喚していたが、全滅してしまった。


 ……。


 ……………。

 

 このようなやり取りを、既に僕たちは一時間以上もこなしていた。

 僕の作り出した領域の種類は数十に上り、既に自分の中にいる魔物の半数は潰された。

 そんな戦いだった。


「ふぅー」


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 その戦いを前に、僕も、時雨さんも共に息を切らしている。

 また、一時間同じことをやれと言われても、無理だ。

 だが、その前に九尾はどうか。


「くぅぅぅぅぅぅうううううううううんっ」


 目の前にいる九尾の力の源泉。

 それはその身にまとう神獣特有の力だ。

 しかし、その力とて消耗し、回復までには時間がかかる。


「ずいぶんと弱まったな」


 今の九尾は最初の時と比べれば、神獣特有の力がだいぶ薄まり、かなり弱くなっていた。


「コォォォォォォオオオオオオオオオオオオンっ!」


 だが、だからと言って、九尾が弱いわけではない。

 僕と時雨さんは共に自分たちへと襲い掛かってくる九尾の動きを回避する。


「僕もそろそろ急激な環境の変化に限界なんだっ!」


 回避の動き。

 僕とて、九尾のことを言えないくらい、遅く、鈍くなっている。


「ここからは二人で行くよっ!もう具現領域はなしだっ!」


「わかった」


 弱まった。

 されど、強力な九尾を前に、僕と時雨さんは二人で刀を構え、そして、九尾の方に向かって地面を蹴って向かっていった。

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