人の力
最初の頃と比べると遥かに弱まった九尾。
それに向かって僕と時雨さんは距離を詰め、その刀を振るっていく。
「こぉぉぉぉんッ!」
僕は九尾の前に立ち、大量の尾を相手に刀を振るっていく。
出来るだけ九尾の尾をたった一人で捌いていく。
「ハァァァァァァッ!」
その間、時雨さんが九尾の尾に守られていない本体の方へと細かな傷を突き刺していく。
九尾は徐々に出血を増やし、それは確かに僅かではあるが、彼に確かなダメージの蓄積となって体を鈍らせていた。
「……っ」
キッツっ!?
時雨さんに攻撃を任せ、一人で九尾の尾を弾いている僕は内心で冷や汗を垂らしながら、歯噛みし続ける。
どれだけ弱体化しても、九尾の尾は早く、重く、尋常ではなかった……過去の僕はよくこれにたった一人で挑もうと思ったなっ!?
そりゃあ、御力へと頼ざるを得ない状況にまで追いつめられるわけだっ。
「……っぶね」
僕は自分の腕を掠めそうだった九尾の尾をギリギリのところで回避し、代わりにこちらの斬撃で僅かにその尾を細くしてやる。
僅かにだが、僕の刀は九尾へと通るようになっている。
「……っ」
「ハァァァァァァッ!」
「こぉぉぉぉんッ!」
僕たち三者が矛を交え、激しくぶつかり合う中。
その途中で僕は時雨さんの方へと目配せを行う。
「……っ」
僕が九尾のタゲを取るようにはしている。
だが、それは完璧でもない。
いくつかの攻撃が時雨さんの方にも向き、それを前にして彼女が徐々に傷を負って顔を険しくしているような最中において、僕からの目配せを受けてゆっくりと頷く。
「退避っ!」
それを受け、僕は時雨さんへと下がるように声をかけ、代わりに魔物を召喚させる。
九尾の全身へと絡みつかせるように全長30mを超す大蛇を召喚して動きを封じさせ、上空より膨大な質量をもつぬりかべを爆撃の要領で、ダース単位で落としていく。
「くぅぅぅぅぅう」
目に見えない壁。存在しない質量を、物理的に有している少々特殊なぬりかべに伸し掛かられるということの威力はかなり大きい。
九尾も例外なくダメージを負い、情けない声を一たび上げる。
「こぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおんッ!」
だが、それでも九尾は九尾。
自分の上に乗っかっているぬりかべを咆哮だけで吹き飛ばし、己の体に絡みついている大蛇も力任せに体を振って強引に引きちぎってやる。
それを眺める僕は、更に自分の手札を切っていく。
出し惜しみはなし。その考えは変わらない。
僕は更なる魔物を召喚していった。
「行け、護地ラ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます