お願い

 話は出来るだけ早い方が良い。

 というわけで、黄野くんと一緒にお風呂を堪能し、二人で和室にやっすい布団で雑魚寝したその次の日。


「おはよう、甘夏」


「うん、おはよう」


 僕は朝から甘夏に神社へと来てもらっていた。


「それで?こんな朝から私に何の用なの?……千夜に呼ばれたのであればいつでも来るけど」


「いや……実はね、甘夏に頼みたいことがあって」


「私に頼みたいこと?」


「そう。黄野くんのように僕の神社の巫女として働いてほしいんだ」


「えっ!?い、いきなり……な、何?」


「いや、うちの神社ってお金ないじゃん?」


「待って?そんなにお金ないの?どうして?」


「んっ?参拝客が来ているところなんてほとんどないでしょ?」


「でも、かなり金払い良くなかった?神社じゃなくて、下の街の方にも家を持って、そこで暮らしていた時は」


「いや、あれは不老不死の薬とか言って、両親が僕の血を売っていたからだよ?」


「えっ……?」


 神さまの体から漏れ出すものを啜って生きていた僕の体は確かに人の者とは変わっており、そんな僕の血もちょっと普通じゃなかった。

 不老不死とはいかないけど、肉体を若返らせ、認知症を治し、癌を治すくらいのことは出来た。寿命で言えば、五年くらいは伸ばしている。

 既に神さまは御隠れになってしまっている。

 なので、今はもう売れないけどね。


「今は僕の血を売っていないから、お金はかつかつだよ」


「……嘘」

 

「ほんと。だから、お金を稼がなきゃいけないの。参拝客を増やそうと思ってね。自分の配信チャンネルで神社の宣伝をしようと思うんだ」


「いや、そんなまどっろこしいことしなくとも、お金が欲しいなら私があげるわよ。これでもちゃんとお金はあるのよ?今でも細々とダンジョンに行き続け、配信も続けているから」


「いや、それは違うじゃん」


 僕はその申し出を断る。


「そんなおんぶにだっこというわけにはいかないよ。一応、こちらとて歴史ある神社の神主一族なんだよ」


 施しは受けない……っ!

 せっかく、自分の神社で稼ごう!となっているのだから、それで頑張りたい。


「おんぶにだっこというわけじゃないわよ。私の配信には千夜のことを知りたい人もかなり来るから。私の活動に千夜の存在はかなり大きいわ。それに、天音家の方も頼られたらお金を払うでしょ。あの子たちにはお金がない、という思考回路がないけど……頼めば湯水のように分けてくれると思うわ。大きく助けられているのだし」


「いや!自分で稼ぐからこそ意味あるんだよっ!」


 天音さんたちからお金を貰ったらそれは企業からの献金の域になりそうでちょっとあれだしね。

 厳しすぎるのかもしれないけど、ここら辺はしっかりしておきたい。

 

「僕が神社で稼げるようになるため、力を貸してくれないかな?流石に黄野くん一人で捌くのは無理だと思ってね」


「いつでも、何であれ私は手伝うけど……」


「おぉ!良かった!それじゃあ、すぐに神社を宣伝する動画を撮らないと!」


 甘夏が自分のお願いを聞いてくれたことに喜びの声を上げる僕はそのまま神社の宣伝の動画を撮るための準備を始めていくのだった。

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