いざ
朝、宣伝の動画を撮った後、僕はすぐに時雨さんと合流。
すぐにダンジョンへと降りる準備を始めていた。
金策を行うとはいっても、それは天音さんたちのお母さんを治してからだ……あの状態のまま、長く放置しているわけにもいかないだろうからね。
早急に、150階層に行って天音さんたちのお母さんの体を治してあげないとね。僕の金策よりも。
というわけで。
「……とうとう次の階層ね」
「うん、そうだね」
僕は自分の隣にいる時雨さんの言葉に頷く。
今、僕たちは前の130階層から更に降り、149階層にまでやってきていた。
次の階層が僕たちが目的地として定めていた150階層となる。
「……水樹と通話が繋がっていないのちょっと不思議な感じ」
これからレベルの高いという階層へと向かおうという時に、時雨さんはぼそりと言葉を漏らす。
「そうだねぇ」
ここでは人類の作った文明の機器が思うように力を発揮できない。
だからこそ、基本的にダンジョンへと潜っている際に繋いでいる天音さんとも今、通話は繋がれていなかった。いつもと違うことがあるのに戸惑うのは、当然だろう。
「……」
「そんなに気負うことはないよ。一度、150階層になら僕も来たことがあるからね。一応、僕の最高到達階層は153階層なんだよ」
ちゃんと僕は一人で150階層のダンジョンボスを倒している。
そう心配することはない。
「時雨さんがいることで、僕は弱くなるかな?」
「んっ、そんなことはない」
「なら、大丈夫でしょ」
時雨さんと僕の具現領域の相性は最高。
強力ではあるが、欠陥だらけの具現領域……それを最高に活かしてくれるのが時雨さんであるわけで、自分の隣にいる以上、前に戦った時よりも遥かにうまく行くはずだ。
魔物をつい最近、補充したところでもあるしね。
「ここで怖気づいてしまうわけにもいかないしね」
「そう、ね。ごめん、少しだけ、ナーバスになっていたかも……この次で、長年の私の戦いの、一つのゴールになると思って」
「一旦は、お母さんのことを忘れて……無理かもしれないけど、忘れてフラットに行こう。緊張していたら、勝てるものも勝てないよ」
「……それも、そうね。私の隣には千夜がいるもの。これ以上に頼もしいことはない」
「そう言ってくれるのなら、嬉しいよ。さぁ、行こうか」
「えぇ、行きましょう」
149階層で少し、足踏みをしていた僕たちは150階層の方へと足を踏み出すのだった。
「……」
前回。
僕が勝って、その次の階層へと足を踏み入れた時には己の力では勝てないと判断し、荒ぶる神を最終的に開放した───今回は、ちゃんと勝てるかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます