第四章 自然崇拝

海外の状況

 日本全土を混乱の渦に叩き落とした一大騒動たるダンジョンより大量の魔物が侵攻してきた事件。

 今、人々の間で迷宮大氾濫と呼ばれているその事変より早いことでもう三週間ばかり。

 とりあえずの事態は収束へと向かい、自分がやらなきゃいけない事後処理の方もほとんど終わりつつあるような状況となっていた。


「海外、ですか?」


 そんな僕は今、夏瑠総理に呼ばれて首相官邸の方にやってきていた。


「はい。我が国には今もなお、世界各国から救援を求められていまそして、その切なる願いを我が国としても、人道的な面から鑑みても、それを跳ねのけるつもりはありません。そこで是非とも、Sランク冒険者の方々のお力を借りたいのです」


 首相官邸の応接室において、僕と向かい合って座っている夏瑠総理が語るのは海外についてのことだった。


「そこまで諸外国の現状は不味いのですか?」


 日本政府が直々に声をかけてくるのってなかなか珍しんじゃないかな?そんなことを前に桃山さんが話していた。

 Sランク冒険者になったからと言って、基本的には政府から厄介ごとを押し付けられることはないから安心してほしい、と。

 つまり、その基本的な状況から外れるほどの状況というわけだ……。

 いや、まぁ……妥当か。

 迷宮大氾濫はダンジョン関連における最悪の事件だろうし。

 

「えぇ、そうなりますな。アメリカは問題ありません。彼の国は国民一人一人が銃で武装しているような国家ですから。何処までも行っても個人主義の国。事態は収束しなくとも、各々で魔物と戦い、勝手にその命を守るための行動を行う国です。ただ、その他の国々は悲惨です。中露の状況はわかりかねますが、先進諸国、発展途上国問わず事態の対応が間に合っていません。」


「そうですか……」


「EU、中東、中央アジア、東南アジア、アフリカ、中南米……本当にありとあらゆる国から助けを求められている状況です。本当に世界中が混乱の中にいるのです」


「……よく考えてみれば、そうなるのも仕方なし、何でしょうか。我が国でさえ、一切の被害なく、というわけにはいかなかったのですから、」

 

 ダンジョン分野における日本の突出度はすさまじい。

 もはやダンジョン関連のすべての分野において日本は世界を突き抜け、保有する戦力も世界最高峰。

 その日本でさえ、事態の収束には苦労したのだ。

 海外がどうなっているか、なんて考えたくもない。


「それでは、すぐに僕は海外の方に飛び出すことになるのでしょうか?」


 これは自分の神社の巫女として、黄野くんを招き入れたのが大正解だったパターンかな?


「いや、これはあくまで、行ってもらうことになるでしょうなぁ……という事前説明だと思って欲しい。というのも、今、日本の神社の方も色々と動いてですね。ダンジョンについて、本格的に、考える必要性が出てきたと言えるでしょう」


「……神社が?」


「えぇ、神々廻様も含め、色々とダンジョンについての意見を交わし合い、理解を含めていきたいということらしいです」


「……なるほど」


 僕は自分の目の前で告げる夏瑠総理の言葉に頷く……そうかぁ、神社全体かぁ。どうなるんだろう。

 純粋に僕のところの神社は孤立し続けているから、どう話が展開されていくのかが想像できず、何とも言えない気持ちを抱えるのだった。

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