仮面の人物

 自分の前にいる化け者にしか見えないながらも、その気配は間違いなく人間であるという本当に気色の悪い性質を持っている仮面の人物へと僕は一切迷うことなく剣を一振り。


「……っ」


「ちっ」


 その一撃を軽く仮面の人物に舌打ちを打ちながら、僕は相手の脅威度を推定していく。


「野蛮な方ですね」


 そんな中で、仮面の人物はローブの中から数本の機械で出来た腕を露出させる。

 その機械で出来た腕の一つ一つにはマシンガンが備え付けられており、こちらの方にその銃口を突きつけていた。


「どっちがっ」


 その大量のマシンガンより放たれる銃弾……それらを僕は剣によって弾いていく。

 銃弾の一発、一発には執念ともとれるような濃密な魔力が込められており、流石の僕もそれに当たると手傷を負いそうだった。


「ふぅー」


 とはいえ、当たるような無様は見せないけど。

 すべての銃弾を叩き落した僕は息を吐きながら、少しだけ痺れた腕を振った後、再度、剣を振るう。

 僕の振るう剣が狙うは自分の方へと迫ってきていたマシンガンの機械の腕とはまた別の腕、先が剣となっているような腕だった。


「……かたっ」


 機械の腕を切断するつもりで振るった僕の刀はその硬い腕を前に、あっけなく弾かれてしまう……ここまで硬いのはちょっと予想外っ。

 思惑敵わず切断することが出来なかった僕であるが、仮面の人物の方も僕の攻撃を受けてその機械の腕の進行方法を大きく変えさせている。

 

「よっと」


 僕はその隙を利用し、一旦、仮面の人物から距離を取る。

 正直に言うのであれば、ここまで強いとは思っていなかった。

 動き的にかなり強い者であるという決断は下しだしていたけど……そんなものじゃないな、これ、。


「オォォォォォォォォオオオオオオオオオッ!」


「邪魔っ」


 とはいえ、それでも何となく勝ち方というのも見えてきた。

 僕は自分の方に突撃してきた黄野くんを足蹴りして退かし、一切迷うことなく仮面の人物の方へと向かって行く。


「ずいぶんと無慈悲なことを……彼はただ、他人に見て欲しいだけだというのに」


「何となくわかってきたっ!人間による科学力の結晶……実に素晴らしい。でも、あくまで自然由来のものなら、僕は負けないよっ」


 そういえば、人間の科学文明こそを至高とし、神の存在を否定しようという組織の存在があるというのを以前、聞いたことがある。

 目の前にいる人間はそれらの関係者だとするのなら……あの機械の腕はすべて、人間の作った機械というではないだろうか?だとするのなら、いくらでもやり様がある。


「自然由来……?我々の文明を舐めないで欲しいのですが」


 僕の元に振るわれる大量の機械の腕。

 たった一本も斬り落とせず、跳ね返されるばかりだった機械の腕が今度はその数を大きく増やして自分の方へと迫ってくる。

 だが、それを前にしても僕の中に焦りも、動揺もない。


「人も自然の一部でしょ……驕りは身を滅ぼすよ?」


 それに対して、僕は付喪神の刀で一蹴。

 それらすべてが斬り伏せられるのではなく、ただただ塵となってこの場から消えていく。


「……ッ」 


「僕の持つ刀は自然の調伏者。その機械が神様の力由来でないのなら、この刀の真骨頂だよ」


 今まではただの硬くて鋭いだけでしかなかった自分の持つ付喪神の刀、そいつを今、ようやく本来の力でもって解放する僕は今、仮面の人物との距離を詰めていくのだった。

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