火の手
「あぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああ」
何故、甘夏がこんなにも発狂しているのか。
一体、僕の知らないときに何が、神様から受けたお願いはそこまで頭が狂ってしまうような話なのか……そんなことを僕が疑問に思っていた中。
「……ッ!?」
いきなり、遠くの方からこの神社にいても聞こえてくるほどの爆発音が聞こえてくる。
そう、ここの神社にまで。山の上にあるこの神社にまで聞こえてくる。
「だいぶデカいぞ……ッ!?」
そんな爆発。
あまりにも大きすぎる。こんな片田舎の、ただの事故程度で起こるような爆発では決してない。
「な、何で……?」
ここはうちの神社のお膝元。
それも、しっかりと神さまの威光が濃く残っている地。
魔物風情が立ち入れるような、そんな場所じゃないはず……ゆるのきのダンジョンだって、僕がしっかりと管理していることもあって、魔物が溢れてくるはずもないはずなのに。
「……煙」
僕が困惑し、動揺していた中で、自分の視界の中へと山の上からでも見えるほど高く立ち上った煙が入ってくる。
街の方に、火の手が上がっている。
その事実を前に、僕は意識を大きく切り替える。
こんなところで困惑している暇はない……大きな爆発により、火の手が上がっているのだ。確実に緊急事態だ。
「位置的に、冒険者ギルド……これは、もしかすると、魔物由来じゃないかも?」
上がっている火の手はたった一つだけ。
そして、その位置は冒険者ギルドであるという事実。
そのことから、僕は今回の火の手の原因を魔物ではなく、人の手によるものなのではないかと思考を張り巡らせ……。
「いや、悠長に考えている場合じゃないや」
僕はそれを振り切る。
行けばわかることだ。こんなこと。
困惑どころか、考えている暇すらないよね、これは。
「時雨さん!僕はちょっと行ってきますっ!遠巻きにこちらを見ている色々な神主さんたちの対応を!」
いきなり帰ってきた神社には自分のところのヘルプに来てくれていた神主の人たちもいる。
彼らは今、信じられないものを見るような目でこちらを見つめていた。
その人たちの対応を時雨さんに任せる。
ここは本来、僕がするべきなんだろうけど……この街の方が流石に大事。
「一応、天音さんのサポートもっ!」
『あっ!?』
ついでとばかりに天音さんと通話を繋いでいたスマホも時雨さんへと渡し、ここの諸々を任せてしまう。
「ん」
「それじゃあ!」
そして、僕は迷うことなく神社を飛び出し、冒険者ギルドに向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます