現状把握

 真由美の言葉に対し、甘夏が信じられないとばかりにあんぐりと口を開かせる中で。


『とーちゃく』


 神の持つ力により、一瞬で東京のど真ん中から片田舎のへと神社へと戻ってきていた。

 

「……えっ、いや、えっ?」


 とはいえ、甘夏はそれどころではないようだったか。


『別にそんな恥しがる必要はないよ?生命とし、子孫の繁栄の為、おと』


「わぁぁぁぁぁぁあああああああああああっ!?」


 もはや嫌がらせの領域とも言えた。

 甘夏は真由美の言葉に対して、頬を真っ赤にさせながら大声を上げる。


「う、うぅん……」


「にゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!?」


 そんなタイミングで千夜が起きだしてくるのであるから、更に、甘夏は頬を真っ赤に染めていく。


「……甘夏」


 そんな甘夏に対して、時雨は憐れむような視線を向けていた。


「うるさっ」


『ふふっ……彼も、起きたことだし、さようなら」


「あー、入っていかないでぇぇぇぇぇえええええええええ!」


 そして、喚く甘夏を他所に、真由美はまた光の粒子となって、彼女の体の中へと入っていくのだった。

 

 ■■■■■


 意識を闇の中へと落とし、神社のダンジョンで魔物を補充していた僕は今、その意識をゆっくりと浮上させていた。


「……どうやら、迷惑をかけたようで」


 そんな僕の頭の中には神様より頂いた、自分の意識が闇へと落としていた中で何が起きていたのか

 まさか、神様が甘夏の中にいて、そのお方がすべての状況を丸く収めてしまうとは思ってもみなかった。


「……なんか、勝手に僕の過去について共有されている」


 ついでにいうと、勝手に自分の生い立ちについてバラされているとも思っていなかった。

 まぁ、別にいいけどさ。そんな隠すようなことでもないし。


『起きたの?』


「……えぇ、起きました」


 一人でぶつくさと状況を確認していた中で、聞こえてきた天音さんの言葉に僕は返答の言葉を返す。

 まだ、通話は繋がったままだったのか。


『どこまでわかっている?』


「ある程度のことなら、テレパシーで」


『それじゃあ、お姉ちゃんと甘夏が頼まれていた内容も知っている?』


「……?それは知らないですけど」


 僕が知っているのはどうやって平将門の怨霊を鎮めたのか。

 それと、ダンジョンとは何であるかを教えると共に、僕の過去を時雨と甘夏に共有しただけだった。


『へぇ……そうなの。それじゃあ、良いわ。二人に対する話だし、貴方が知るべきものでもないわ。それで?聞きたいのだけど、あの、神様らしい人が語ったダンジョンについての話は本当なの?』


「ダンジョンも、魔物も、魔力も、すべてが世界中の『神』という高次元の存在が由来になっているっていう話のこと?それなら、本当だと思うよ」

 

『前から、知っていたの?』


「むしろ、知らなかったの?」


『……えぇ、知らなかったわ』


「わぁー」


 おかしい。他の神社を受け継ぐ伝統ある神主たちであれば、ダンジョンが何であるかも知っていそうなものだけど……別に孤高を気取っているわけじゃないけど、代々やってきている内容も内容でかなり世俗からは距離を置いていた僕たちの神社だけど、もっと色々と顔を売っていくべきなのかもね。


『……この話については良いわ。それにしても、今回の騒動の原因に神がいるのなら、もう少しこちらに対して何かあってもいいというのに』


「信仰心を忘れた人類への、天罰だよ。神とは、脅威なんだ」


 一神教の神様と、多神教……自然信仰の神様とでは大きく違う。

 まずは祟りを恐れるところから始めないとね。


「何を?」


 なんて会話を天音さんとしていた中で、時雨さんの方から声をかけられた僕はそちらのほうに意識を向ける。


「天音さんと状況のすり合わせをしていたんだよ」


「なるほど」


「あぁ、それと、迷惑かけちゃったみたいで、二人もごめんね?」


 荒ぶる神を暴走させてしまうのは、完全に賭け……というか、自暴自棄だ。

 周りをすべて消し去ってしまう荒ぶる神。

 あの決断を下した僕は、間違いなく、時雨さんと甘夏の命を諦めた。

 それについての、謝罪を僕は口にした。


「ところで、そこで発狂している甘夏は何なんですか?」


「あぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ」


 そして、その次に僕は結構ずっと気になっていた謎に発狂している甘夏の方に視線を送り、首をかしげるのだった。

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