やること
天空の城ラ〇ュタか。
バ〇スと言えば、落ちるか。
そんな様相を見せている天空に浮かんでいる数多くのダンジョンから、ゆっくりと降ってきている数多多くの魔物たち。
「これは……流石に無理ですね」
それを前にして、僕は匙を投げだすようなことをしていた。
「な、何故……?何か、特別な問題があるの?」
そんな僕の言葉に対する天音さんの言葉。
「一体……一体が、深層の、私たちが潜っている階層で出てくるような魔物」
それに答えるのは声を震わせる時雨さんの言葉だ。
「そういうことですね。僕が調伏している魔物たちはそこまで精強である者たち、というわけでもないのですよ。一人で百鬼夜行を起こせるとは言っても……それが、深層の魔物たちで出来た化け物集団、というわけじゃないんです」
深層で戦えるような魔物など、数十体程度。
概ね、魔物たちの使い方としては僕の戦闘のサポートがメインだ。
「数であんな化け物たちと競い合うなんて無理です。つまり、僕一人での解決は無理です」
本当は自分の力だけで何とか出来たら最高だったんだけどね。でも、流石に無理そう。
もうちょっと、調伏している魔物の数を増やしていたら……でもなぁ、僕のところにも僕のところで、伝統があるし。
「……そう。一人では無理なのね?」
「えぇ、それと早期解決も。ですが、そもそもとして早期解決できる方がおかしいでしょう。今、何が起きているのか。魔物が何故、地上に溢れているのか。どうすれば、魔物を再び、ダンジョンの中に封じ込めることが出来るのか。すべてが謎です。焦らず、一人でも多くの人を助けられるよう動くほかないでしょう」
「そうね。ふー、ここで、焦っていても仕方ないものね。災害なんてつきもの。受け入れ、動くしかないわね」
「そうです」
僕は天音さんの言葉に頷きながら、この家に仕舞ってあった東京の地図を引っ張り出してテーブルの上に広げる。
「まずは政府とのコンタクトが必須。そして、事態が事態。Sランク冒険者同士の動きがカギになってくるわね」
「えぇ、そうでしょう」
「政府はSランク冒険者とのコンタクト方法を持っているはず……Sランク冒険者との協力、という話でも政府とコンタクトを取るのが最優先になるわ」
「えっ?」
「貴方は特例過ぎて、中々触れられなかったのよ」
「なるほど」
「それじゃあ、自分は何処に行くべきですかね?政府とコンタクトを取る、と言ってもどうすれば?」
「ちょうど、首相会見が元々別件で予定されていたはず……今、首相官邸に行けば大体の人と会えるわ。貴方ならアポなしであっても対応してくれると思うわ」
「なるほど。それじゃあ、そこに行くのがベストですね」
「えぇ」
やることは決まった。
「ね、ねぇ……」
そんな中で、僕の隣にやってきていた甘夏が声をかけてくる。
「私たちの、街は大丈夫なの?か、家族は……」
「あー、あそこは大丈夫だよ。甘夏も、見たことあるでしょ?」
故郷の、自分たちの住む町のことを心配している甘夏の言葉に安心するよう声をかける。
「う、うん。そうだね……そ、それじゃあ、それは、全国レベルで、活用できないものなの?」
「無理だね。基本的に日本は土着信仰なの……他のところがどうなっているのか、そこら辺を僕は知らないから、何とも言えないけど、動きがないということはそういうことなんだと思う」
我が国、日本には古来の時より信仰されてきた土着の神々が存在している。
僕の持つ調伏などの力は、うちの神社に御座す神より与えられた力の一つだ。
神は必ずしも人の味方とは限らない。されど、自分たちのテリトリーを荒らされて怒らぬ神などいない。
あの街全体が僕の神社に御座す神のテリトリーであり、そこを侵す魔物たちには鉄槌を下してくれることだろう。
だから、少なくとも僕の街は大丈夫。でも、その他のところで神々が動いたという話は聞いていない。多くの街で、全国規模で今、多くの被害出ている。
各地に御座す神々は今、動いていない……僕のところの神社の神もその力を衰えさせ始めている。
何かが、起きているのだろう。
「ただ、人の世を守るのは何時だって人だよ。そんな、神頼みでいるべきじゃないさ」
まぁ、それを人の身で推察することなんて出来やしない。
「……それも、そうだけど」
「わからないところにしがみついていても仕方ない。僕たちは自分たちの力でどうにかするほかないよ」
「そうね。くよくよしていても仕方ないしね」
「そういうこと」
僕は甘夏の言葉に頷く。
「それで、僕は首相官邸の方に行くけど……」
「私も行く。一人にさせないわ」
そして、そのまま甘夏は続く僕の言葉にも力強い言葉で頷く。
「それで、時雨さんはどうしますか?」
「わ、私は……」
話を振られた時雨さんは、その視線を泳がせる……やっぱり、二人のことが心配かな?
「千夜。ここは今、安全なのね?」
時雨さんはここに残るかも、なんてことを僕が考えたタイミングで天音さんが口を開く。
「え、えぇ、僕がここを領域で閉じてしまっているので」
「なら、良いわ。私と輝夜はここにいる……お姉ちゃんも行ってきて。多くの人を救いにね」
そして、その天音さんは時雨さんの背中を押した。迷いない言葉で。
「……わかった。私も行く」
それを受け、時雨さんも動くことを決意する。
「助かります……それじゃあ、行きましょうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます