マーカーという便利アイテムのおかげですぐに、家にまで帰ってくることが出来た。

 本当になんでこんな便利なものを知らなかったんだろう!?僕は割と、本気でショックなんだけど。


「ただいま」


「ただいま……」


 そんなことを考えながら、僕は時雨さんと共に天音家の方へと戻ってきていた。

 この後、僕は一旦、神社の様子を確認するために戻っていく必要があるだろう。


「おかえりなさいっ!」


「んっ?」


 そんな僕を出迎えたのは見知らぬ小さな少女だった。


「初めまして、千夜さん。私は天音あまね輝夜かぐや。三姉妹の末っ子だよ。よろしくねっ」


 天音さんをぎゅっと小さくした少女。

 無表情で、常にクールな天音さんとよく似た少女がニコニコとした笑みを浮かべている。


「よ、よろしくお願いします」


 そんな事実を前に、少しばかりの動揺を抱きながらも頷く。


「さぁさぁ、リビングに上がって」


「あっ、はい」


 そんな僕は流れるようにその少女、輝夜さんに押されるようにしてリビングの方へと押し込まれていく。

 その僕の後にはちょっと呆れた様子を見せる時雨さんもついてきていた。


「僕はこのまま、神社の方に戻っていくつもりですから……」


 家の中に押されるのは良いけど……僕はこの後、神社の元に帰るつもりなのだ。

 正直、リビングの方にまでまた来るつもりすらなかったんだけどぉ。

 玄関まで時雨さんを届けて終わり、というつもりだったのだ。


「いや、神社のことは心配しなくていいよ?既に私が手を回して、人員を派遣しているから。ちゃんと綺麗に維持され続けていると思うよ」


「んっ……?」

 

 いや、今……なんて?


「神社本庁の総裁に掛け合っておいたの。それで、しっかりと人材を派遣してくれることになったわ。出雲大社や、伊勢神宮、諏訪大社などの歴史ある確固たる神主を派遣してもらったから、安心してほしいわ。千夜さんの神社は歴史があるところでありながらも、被包括関係を有せず、単立宗教法人として運営されていることから、些細な反対等もあったけど、うまくまとめたわ」


「えっ?はっ?」


 待って、何それ、何も聞いていないよ?

 というか、神社本社!?うちが確固として、独立を保つ名目で関係を断ってきたあそこに……人員を貸してもらった!?どういうこと、そんなこと許されたの?

 いや、そもそもとして、神社本庁の総裁に掛け合った?皇族、だよね?ただの人がお会いになれるような御仁じゃないでしょ。

 それに、うちの神社はかなり特殊なんだけど……。

 

「私が見て、神社の運営をどうすればいいか、それがわかっているから大丈夫だよ。そこら辺の注意事項もしっかりと告げてあるわ。それでもやっぱり、明日、確認の為に一旦は帰るよね?もうお弁当の用意もしているから、安心してね?日帰りで戻ってこれるだろうから、夜ご飯は私たちと食べましょう?」


「ん、んん?」


 ちょっと待って、安心とかじゃない。

 なんか、信じれないくらいに話が進んでいないかな?


「それで、千夜さんとしては私たちの家の方が気になってくるよね。神社本庁の総裁に会える、なんて相当のことだもの。今から、私たちの家について話したいけど、良いかしら?」


 ズバズバ当てられる!?怖い!

 まだ、僕は何も話していないよ?


「……はい。大丈夫ですよ」


 話についていけていない。

 置いていかれている……そう思いながらも、僕はとりあえずで頷いてしまうのだった。

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