VSダイダラボッチ

 自分の配信中。

 急に増え始めた視聴者数。

 それは、窮地に陥ってしまっているらしい時雨さんを助けて欲しい!というSOSを知らせるような人たちだった。


コメント

・急に助けをwww

・どの口が言っているねんw

・あさましく草

・ウケる


 荒らしの多くが時雨さんの配信へと出向き、荒れつつも割と穏やかだったさっきまでのコメント欄の中でワイワイしていた人たちは急に現れた人たちを嘲笑っていたが、人が死にかけているというのだ。

 前情報として、どのような情報があったとしても、神主として人助けに向かわないわけにはいかないだろう。

 というわけで、僕は時雨さんの元へとやってきて華麗にダイダラボッチを倒した……つもりだった。


「……マジかい」


「おぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!」


 だが、ダイダラボッチは普通に僕の千手観音も跳ね除け、すべてを食らう暴兎たちも弾き飛ばし、その威容をこの場で誇っていた。


「時雨さんはそのままで……自分にお任せを。今、Sランク冒険者になるための試験を受けている最中である自分の強さ、ここでしっかりと見せておくので」


 ここまで来たら、流石にわかる。

 僕、めちゃんこ強い。

 多分、時雨さんよりも強い。

 なら、全力でイキらせてもらうっ……そして、その強さは自分の神社にあると吹聴して宣伝してまわるのだ。


「ふぅー」


 僕は右手に刀を持って、そして、左手に多くの札をもってダイダラボッチの方へと近づいていく。


「おぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 そんな僕へとダイダラボッチは迷いのない動きで、その腕を自分の方へと振るってくる。


「羅生門」


 それを迎え撃つのは、鉄製の巨大な門だ。

 天より振ってきた巨大な門がダイダラボッチの前に立ち、その進行を止めようとする。


「……っ」


 のだが、羅生門はダイダラボッチの腕を受けて粉砕。

 防ぎきることは出来なかった……一応、あいつは僕の手札の中で一番カチコチのやつなんだけどねっ。


「よっと」


 とはいえ、羅生門のおかげでダイダラボッチの腕の振りは遅くなっている。

 かなり余裕をもって回避。

 そして、二の手で振るわれたもう片方の腕は自分が刀で斬り落とすことで無効化する。


「……ずいぶんと強くなっているようで」


 さて、最初は羅生門で防げるダイダラボッチが何故、いきなりこんなにも強くなったのか。

 見た目上の変化はまるでないのだけどね……内部的なもの。

 魔物が舐めプなんて聞いたことがない。

 流石にこの強化はセーブしていたものを開放したのではなく、技によるあくまで一時的なものであると思いたいのだけど……。


「流石に希望的観測が過ぎるよな」


 相手の技による強化が切れるのを待つ。

 なんてことは、相手の情報が何もない中で行うのはリスクが大きいだろう。


 別に、勝てないと感じるほどの相手でもない。ここで、確実に倒しきる。


「おぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!」


 再生させた腕も含め、ダイダラボッチはその両手で僕の方へと殴りかかってくる。


「さっきから吠えてばかりうるさいよっ!風狸っ!」


 それを僕は蹴りで迎え撃つと共に、何十体もの魔物を召喚する。

 僕の渾身の蹴りはダイダラボッチの両手と競り合い、それに押し勝とうとダイダラボッチはどんどんと力を籠め始める。


「大鯰」


 そして、そんな中で僕が呼び出すのは一体の大鯰……地下に住み、体をゆすることで地震を引き起こすそいつを、流石にダンジョンの床の中に召喚することは出来なかったので陸の上に。

 陸の上でぴちぴちと跳ねてもらうことにより、この場に大地震を引き起こさせる。


「ぉぉぁああああ」


 前がかりになっていたダイダラボッチはその地震を受け、その足元をふらつかせる。

 そこで、力を発揮してもらうのは少し前に召喚していた何十体の魔物、風狸たちだ。

 ここまで力を貯めてもらっていた彼らの力で、そのダイダラボッチの足元を掬って体を浮かしてもらう。


「しぃぃぃぃ」


 そして、それに合わせ、僕も移動。

 ダイダラボッチの両手から離れ、彼の腹の方へと。


「せぇぇぇぇいっ!!!」

 

 これまで鍔迫り合いをしていた相手を無くしたダイダラボッチの腕は更に前へと。

 彼の巨体が完全に傾いていく……そんな中で、僕は渾身の蹴りをダイダラボッチの腹へと叩き込み、その体を大きく打ち上げる。

 その次の瞬間。

 一気にこの場全体が暗くなり、冷気が漂い始める。


「ワタシ、キレイ……?」


 これを引き起こしたのは僕が召喚した一体の魔物によるもの。

 白いコートを着て、白いブーツを履いているマスクで口を覆い、目元を長い黒髪で隠している一体の女性が僕の隣に立ち、ダイダラボッチの体を見上げていた。


「おぉぉぉぉおおおお」


「答えろやァッ!!!」


 それに対して、ダイダラボッチが呻き声を漏らしたその瞬間、その女性の姿が大きく変貌。

 マスクを手で引きちぎると共に、その体は大きな口だけとなり、宙に浮かぶダイダラボッチの足を丸々呑み込んでかみちぎる。


「おぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 両足を失い、地面に落ちるダイダラボッチ。


「させんよっ───不知火」


 そんなダイダラボッチはすぐさま両足を再生させようとするが、それを僕が召喚した白い炎が阻止する。


「食らえっ」


 次は暴兎なんていう生易しいものじゃない。

 倒されると再度、召喚できるようになるまで時間がかかるものの、圧倒的な攻撃力を誇る僕の手持ちのエースたち。

 黄龍、麒麟、八岐大蛇……ありとあらゆる大怪獣がダイダラボッチへと襲い掛かり、その体を大きく削っていくのだった。

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