第8話 食費
「それにしても、ゴーレムの魔石が1万円で売れて助かったよ。大赤字になるところだった」
「そうですね、思ったより高く売れました」
1人当たり5000円の収入だ。他の魔石も売ったのでそれも合わせるともう少し高い。
経費も色々かかっていて儲けはそこまでないけど、ホタルがポーションをパーティーの共有財産として扱うから代金はいらないと言ってくれたため、ギリギリ黒字にはなっている。
「明日の分の食費が足りなくなるところだった」
「え、そんなにギリギリの生活をしているんですか? 少しなら私も貸すことできますよ。パーティーメンバーがご飯食べられずに力が出なかったら私も困りますから」
「ありがとう。でも、遠慮しとくよ。食費が足りないのは俺じゃなくて大喰らいの同居人だから」
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「ただいま」
「キューー!」
ドタドタと同居人が俺を迎えてくれた。
おかえりと言ってくれているのだろうか。
「お前のために沢山肉買ってきたからな」
俺はそう言って、スーパーで買った大量の肉を見せる。すると、同居人は喜びのダンスを始めた。
「キュッキュ、キュキュキュー」
同居人が動くとドタドタという音が鳴る。
いつか下の階からクレームが入りそうだ。
それに、尻尾を何かに当てて壊しそうで怖い。
とりあえず同居人を落ち着かせてキッチンへと向かう。
一人暮らしをやっていたから料理はある程度できる。だけど、同居人は食べる量が多いから少し大変だ。
買って来たものを冷蔵庫に入れたりして準備を始める。
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「キュウリ、ご飯できたぞ」
山盛りのハンバーグが乗ったお皿をテーブルの上に置く。
すると、同居人——キュウリが待ってましたと言わんばかりにキューと鳴く。
キュウリの近くには生の牛肉も置く。
キュウリは調理した方が喜ぶけど、生肉も食べられないわけではない。
全部調理していたら時間が足りないから生肉も食べてもらっている。
一応寄生虫とかが少ない牛肉を選んでいる。
「美味しそうに食べるなー。ドラゴンってみんなこれぐらい食べるのかな?」
キュウリが食べるのを眺めながら、これからどうするか考える。
今はまだ小さいから良い。
恐らく幼体とかだろう。
丸っこい感じで俺より小さい。
だけど、10日前のキュウリを拾った日を思い出す。雨に濡れていたキュウリは、今より小さかった。
俺がご飯を与えているからだろうか。一回りほど大きくなった。
このまま育てば、ドラゴンであるキュウリをマンションの狭い一室で育てるのは難しくなる。
だからと言って、捨てるのもどうかと思う。
もし、その辺にダンボールの中に入れて捨てればどうなるか分からない。
猫や犬ではなくドラゴンなのだ。
野生化して凶暴になっても困る。
「まぁ、いいや。いただきます」
今は深く思い悩むのをやめてご飯を食べることにした。
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「キュウリ、おやすみ」
今は9月だけど、今年は猛暑が続いていて夜もあまり涼しくならない。だから起きたらいつも汗だくになっている。
そんな俺を思ってか、キュウリは自身の冷たい鱗を俺に押し付けてくる。
俺はキュウリを抱き枕にして目を閉じる。
明日も学校だ。
傭兵になったからって休む理由にはならない。
野村先生は勿論、クラスメイトにも傭兵のことを話すつもりはないので以前と変わらない生活をするつもりだ。
「ダンジョン、楽しかったな」
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