めいど 弍 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。
柏木玲那が自分を連れていったのは隣町の横断歩道だった。
随分と遠くまで来たなと思った。
「遠いよね、どうしてこんなに遠いんだろ。ここには拓の知り合いは居ないはずなのに。何か心当たりある?」
少し考えた。
この町は隣町と言ってもあまり町並みは自分たちの地域と変わらない。ただ場所が違う、そんな感じだ。
始めてくる場所に感じるが、妙な親しみを感じる。
もっと妙に感じたのは、自分がこの横断歩道を見ると焦りを感じることだった。
柏木玲那は「変だねえ、変だねえ〜」とふざけたように、自分を唆してくるように言った。
彼女は笑っていた。
その笑顔の裏に、どことなく不安や迷い、
悲しみがあるように感じた。
それでも彼女は美しかった。
ふいに、自分が、
柏木玲那を、
好きだ、
と思い出した。
突然のことだった。
君が好きだ、
と言おうとして、
日が落ちた。
真っ暗になった。
終わった。
――――――――――――――――――――――
気がつくと、いつの日か柏木玲那と来た横断歩道にいた。
太陽はなかった。
星が綺麗だった。
月明かりが信号機の影を映し出していた。
月よりも、
暗闇に輝く信号の赤色の方が美しいと感じた。
「あっ、今日はちゃんとここにいてくれたんだ!」
横断歩道の向こう側に彼女がいた。
下には白のプリーツスカートを身につけ、
上には鼠色のTシャツに前の空いた薄い水色のパーカーを着ていた。
満面の笑みを浮かべていた彼女をみて、
可愛いな、と改めて思った。
彼女の後ろに目をやると、昔の名残を残した古い駄菓子屋があった。
高校で柏木玲那と仲良くなり、2人で帰ることが多くなった。
ああ、そうだ。
学校の近くに、それに似た駄菓子屋があった。
2人で帰り道によっては麩菓子を買って食べた。
彼女の好物。
そう、彼女の好物。
よく好んで食べていたな、と思い出した。
買わなければ、と思った。
ふいに痛みを感じた。
横断歩道の前で、倒れ込みそうになるほどの激痛を感じた。
「ゆーくん…………!!!」
彼女が自分の名前を呼んで駆け寄ってきた。
信号は青になっていた。
ゆーくん、という名前を聞いて、
自分の名前を思い出した。
真宮結城。
駆け寄ってきてくれた彼女に大丈夫と言おうとして、彼女の顔を見た。そして、驚いた。
彼女は泣いていた。
その綺麗な顔で、泣いていた。
「また、◼️▪️◼️▪️たと思った、、」
泣いているせいか、聞こえなかった。
結城は、玲那の泣いている顔を見たくないと思った。
だから、正面から彼女を抱きしめて彼女後ろに右手を回して、頭を撫でた。
大丈夫、大丈夫だから。
玲那はもっと泣いてしまった。
弱ったな、と思って、
彼女の啜り泣く声を耳元で聞きながら、
彼女の温かみを肌で感じながら、
彼女の懐かしい香りを感じながら、
結城は苦笑いした。
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