〜ブルーアイシリーズ〜 柏木玲那は「めいど」に未練はない。

@Ritsu20

めいど 壱 ◼️◼️◼️◼️◼️◼️?

柏木玲那は泣きながら笑って言った。

 「 ◼️▪️◼️▪️◼️ 」

 その意味がやっと分かった。

 

――――――――――――――――――

 

柏木玲那は突然振り向いて首を傾け、人の顔を見て安心したように笑った。そうしてまた前を向いた。

 彼女の、ミディアムから少し伸びていて艶のある黒髪を、風が撫でた。

 

 ――――――――――――――――


 「やっぱりさ、これだけは言わなきゃ。

  ◼️▪️◼️▪️◼️▪️◼️▪️◼️▪️◼️」

 柏木玲那は少しはにかんでそう言った。

 何を言いたいのだろう、そう思った。

 彼女の特徴はなんと言ってもその透き通るような白い肌だった。

 その肌や細くてしなやかな手足を見れば、どこかのお嬢様か何かと思ってもしょうがない。

 そう思いながら、彼女の目を見るとそうした考えは尽く裏切られる。

 彼女の青みがかった瞳は大きく丸っこくて可愛らしく、まるで無邪気な子供を連想させるそれだった。大人びているな、とまた思ってしまった自分が少し馬鹿らしくなった。

 「また子供っぽいと思ったでしょ」

 彼女はそう言って、彼女なりの怒りの表現だろうか、頬を膨らませて見せた。

 少し楽しそうに見えた。


 ――――――――――――――――――――


 気づいたら学校の前にいた。太陽は校舎の影を長く映し出している。西空は赤みがかった紺色をしていた。

 18時くらいだろうか、そう思うような時分だった。

 時間に当てがついたので、今度は辺りを見回した。

 人気のない校舎。校門前の横断歩道。制服姿の自分。

 そして気づく。人が誰もいない。人っ子一人いない。ただ無機質に横断歩道の信号が、赤になったり青になったりを繰り返している。

 不思議と変には思わなかった。

 

 さて、どうしたものか。

 校舎前でひとりでいる自分。

 今しがた迄、何をしていたのか全く思い出せない。

 制服を着ているから、

 きっと学校からの帰路なのだろう、

 そう思うことにした。

 その時だった。

 「やあやあ、さっきぶりじゃないか」

 柏木玲那が現れたのは。

 さっきぶり、という言葉に引っかかりながらも、声がした方向を振り返る。

 そこには、柏木玲那が立っていた。

 「あれ、制服なんだね、君は。」

 確かに、彼女は制服では無く、白のワンピースを着ていた。容姿が美しいだけに、白のワンピースはより一層彼女を引き立てているように見える。

 「まあいいか。私、行きたいところがあるの。一緒に来てくれますか?」

 いつもの事だ。

 二つ返事で承諾しようと思った。


 柏木玲那は幼なじみ、いや、幼なじみと言うと語弊がある。大して親しいわけでは無かった。幼稚園が同じだっただけで、高校で再会して彼女が声をかけてきたとき、思い出せずに彼女を怒らせてしまったくらいだ。

 柏木玲那は美人だった。

 高校の入学式ではじめて彼女を見た時そう思った。

 初対面だと美人、付き合っていく上で美人から可愛いに印象が変化する人間とは、こやつのことをいうのだろうか?

 そう思わざるを得ないような無邪気さが彼女にはあったのだった。


 柏木玲那と歩いていた。

「そういえば、どうして学校の前にいたの?」

 彼女はそう言った。

 どうしても何も、分からない。気づいたら校舎前にいたのだから。

「ふーん。そうかいそうかい。私も、課題やらなきゃ、って思ってるのに、気づいたら寝ちゃってたりすることあるし。」

 それは違うんじゃないか?

 彼女は照れ隠しのような、そんな顔でニシシと笑った。

 「まあ、いいのいいの。気にしないで。ほら、置いていくよ!」

 そう言って前を足速に歩いていた彼女は自分を急かしてきた。

 このまま離れたらもう会えない気がした。負けじと急いでみたが彼女の速さは、足が速いとかそういった類の速さでは無い、何か違う速さがあって、また追いつけなかった。

 彼女は勾配の緩い上り坂の先から少し振り返って見せた。

 西の方向に向かって歩いていたので、夕陽が見えて、少し眩しく感じた。

 心做しか、その表情が少し悲しそうに見えた。

 気のせいかなと思いなおした。

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