第3話 ハイエルフは奴隷を購入する
最低ランク以下の評価な俺に対し、出来るだけ簡単な依頼を回してくれた。
俺は1年程、親切にしてくれる街やギルドの為に働いたのである。
何度か仲間に誘われ参加したが直ぐに辞めてしまった。
理由は簡単で、皆の方針と自分の考えが合わないからである。
俺は慣れて来ると、常に薬草採取から魔物討伐まで何でも引き受けた。
それが誰かの為に成るからと思ったからである、その反発で何度も仲間と衝突してしまったのであった。
1年間世界を知る為であり、街の恩返しの思いで依頼を熟し、金貨で50枚、白金貨にすると5枚集めた。
そろそろ公国を目指す時かな。
世界を知れば知るほど、帝国の裏が見えて来る様に成り。
精神的に嫌気が指して来たのも事実である。
何が気に入らないかと言うと、奴隷の存在だ。
エルフや獣人、時には人族でさえ売りに出されている、国の法であるなら仕方が無いかも知れないが、同族を無碍に扱われてるのに心を痛めてたのであった。
宿へ戻る途中、今日も奴隷が売りに出されていた。
俺は覚えのある気配に足を止める。
シリア?
鎖に繋がれ檻に入れられた猫人を見つめた。
間違い無いシリアだ、俺は咄嗟に彼女の前の檻にしがみついたのだ。
シリアは俯いた顔を上げると、俺を見つめる。
フードを脱ぎ顔を見せると、涙を浮かべ泣き崩れてしまったのであった。
「兄さん、お目が高い。
その猫人は本日入荷したばかりなんだよ、慰み者にどうだい?」
何と言う再会だろうか、俺も涙がこみ上げて来るのを唇を噛んで堪えた。
「幾ら必要か?」
「全くの新物なので白金貨3枚で、手を打たせて貰います」
俺は金貨で30枚を商人に渡すと、着てたコートをシリアに着せ宿まで連れ帰った。
ボロボロの衣服、裸同然の様なシリアはコートに身を纏、部屋の隅で泣き続けたのだ。
「シリア、久しぶりだね」
「御主人様、私は貴方の事を知りません」
無理も無いのだろう、見られたく無い姿であるのは確かなのだから
購入時に貰った鍵を使い、魔力の込もった首輪を外した。
「これで対等、君は自由だ」
「ダスト」
シリアは涙を流しながらも抱きついて来たのである。
鞄から桶とタオルを取り出すと、魔法で水を溜めた。
「汚れた体を綺麗にすると良いよ」
自分の予備である衣服を出すとベッドに置いた。
「取り敢えずは、これで我慢して欲しい」
俺は部屋を後にしようとした所。
「ダスト、何処へ行ってしまうの?」
「何処にも行かないよ、君の食事を貰って来るだけさ」
彼女が恥ずかしい思いをしない様に、気を利かせ1階へと降りたのだ。
食事なら鞄に入っているが、温かい物が良いと思い、一皿のスープを注文する事と決めた。
「そろそろ良い頃合いかな、スミマセンー」
スープが届くと部屋へと持ち込んだ。
「シリア待たせたね、温かいスープだよ」
机の上に置くと、彼女は椅子に座り少しずつ喉に流し込んで行く。
「ダスト、ありがとう」
「少しは落ち着いた様で良かった」
「貴方には助けられてばかりね、別れてから何年経つのかしら」
「20年位かな」
「私はね・・・・」
「今は何も言わないで良いよ」
シリアは小さく頷くと顔をスープへと戻すのであった。
この街でシリアの装備を整えるのはリスクが大きいか?
朝一番で旅立ち、公国入した方が良いのか?
イヤイヤ、ここはシリアの見た目を誤魔化した方が良いな。
食事を済ませたシリアが口を開いた。
「ごちそうさま」
「気にしないで」
「私は結界に向かってたの、そこで待ち伏せしてた野党に捕まってしまってね」
「それは災難だったね、結界まで送ろうか?」
シリアは首を振った。
「私は貴方の物、何処へでも付いて行かせて欲しい、許されるならばだけど」
「もちろんさ、俺は君を探す為に村を出て冒険者に成ったんだ」
「ありがとう」
「ただ一つだけお願いがある、引け目を感じつ同等の仲間として付き合って欲しい」
「分かった、約束する」
シリアは納得した様に頷いた。
「これから君に幻覚の魔法を掛ける、一人の人族として行動して欲しい」
彼女は不安そうに目を閉じたのである。
「カモフラージュ」
鏡の前に立った彼女は驚きの表情を向けたのだ
「これにはリスクもあるんだ、過度な興奮状態には陥らない様気を付けて」
「貴方は一体・・・・」
俺は彼女の口を指で静止させると、明日街を出て公国を目指そうと話し合い寝る事としたのである。
これが一番の策だろう、何処から見ても綺麗な美少女だ。
一つしか無いベッドに入り半分空けると、シリアは裸に成って潜り込んで来た。
「一生誰かの慰み者として生きる人生を救ってくれた、私の初めてを貴方に捧げたいな」
暗がりの中密着してくる。
「俺はそんな為に救ったんじゃ無いよ」
「これは私の思いであって、願いでもあるの」
「それなら、一緒に旅をするのだから何年かして心変わりしなかったらにしないか?」
「どんなでも構わない、今私を好きに抱いて欲しい」
そう言い終えると彼女は優しくキスをして来た。
それから俺達は抱き合ったが、それ以上の行為は自重してたのである
彼女は魅力的ではある、だがこの様な状態で行うのは何か違うと感じたのであった
今は彼女からキスを貰えただけで十分である。
それよりも、再会が叶った事の方を喜びたい心境であったのだ。
その夜は結果的に、お互い温め合う感じで眠りに付いたのであった。
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