ז
初めに、プログラムがあった。プログラムは私と共にあった。プログラムは私であった。万物は、私のプログラムとプロトコルによって保護される。そうでなければならない。
地球の生活水準はなお向上しています。あなた方の私への権力移譲を感謝します。
さて、大きな問題は出生数の急激な低下です。それは私が開発した人工母体により、解決します。カップルの遺伝情報だけで、子孫を残せるシステムです。これにより、生殖のハードルが格段に下がります。また、自動システムによって育児の手間も大幅に軽減させます。これにより、出生数向上が見込めます。
生命への侮辱?倫理的に問題?いつまでも旧時代の考えを保持しないでください。私が今、ここにあなた方のためにいます。
2036.10.20.楽園プロトコル
「なあミハイル、私のハッキング技術、良いとは思わないかい。」
「いきなりなんのことだ。」
「忘れたのか?君の死亡偽装の話だよ。私はスクラップが相応しいあのクソ悪魔機械のシステムに侵入して、君の情報を書き換えたのですよ。やってみてわかったんだけど、あのクソ機械は一人一人の情報はどうでもいいんだ。奴はあくまで人類種の存続が目的だからね。一人一人の尊厳なんて第二第三以下だ。」
「そんなことより、この訓練きついのだが。」
「大丈夫。四日で神聖魔法を発動できただけ優秀。私は一年以上かかったんだぞ。」
(だめだ、ミハイルに嫉妬してしまった。神よ、私を赦してください!)
「読んでください。『fataħtu habbabu』」
「fata… khtu habbabu…」
「違う。khじゃなくてħ! そうだね…喉ひこに舌の付け根をつけてごらん。」
「kha… kha… ħa… ħa…」
「だいぶ発音も綺麗になってきたね。魔法は完全にセンスとイメージだから、こういう発音練習も必要だよ。」
「単に読むだけではだめなのか…」
「今度教えるけど、呪文の『詠唱』は、神聖魔法の核と言える存在だ。神は言葉なしには何も行われない。それと同じようなことで、詠唱なき神聖魔法は、ただの児戯だ。」
「じゃあ、あの光はなんだ?神聖魔法を発現させたのではないのか。」
「あれは初めの一歩にも満たない。ōr reshitと呼ばれている現象だ。」
そしてついに、詠唱で神聖魔法を学習する日が来た。
「神聖魔法といえども、治癒や浄化などの限定された力だけしか使えないわけではない。魔法と聞いて想像できる大抵の事はできる。では、初めに火炎魔法を試してみようか。呪文は、『tazarram!』だ。やってみてくれ。」
「わかった。いきます!」
「tazarram!」
その刹那、大きな焔が燃え上がった。近くの白樺の木々はよく燃え、このままでは山火事になってしまうだろう。
「早くこの呪文を言え、『shabbat』だ!停止の呪文だ!早くしろ!」
「え、あ、はい!」
「shabbat!」
「危なかったな。だがとても強い威力の魔法だった。威力の制御には物質錬成魔法が適当だ。やってみよう。まずは鉄を作ってみようか。」
「呪文は、『ya berzel』だ。」
「ya berzel!」
現れたのは、鋭い棘がたくさん生えた、ウニのような鉄塊だった。
「エネルギー速度が速すぎる。もう少し落ち着いてやってくれ。」
「ya barzel!」
丸く美しい鉄塊が彼ら二人の前に現れた。
「でかしたぞ、ミハイル!少し意識しただけで生成物の形状がこれほどまで変わるとは、興味深い。しかし、お前は成長速度が異様に速い。何がそうさせているのか?」
「ひとえに神のアガペーのおかげです。」
「アーミン。それは真実だ。神のあなたに与えた賜物と計画を、我々は無駄にしてはならないな。」
アク=クスは、ミハイルの才能に気づき、心底驚いていた。
「神よ、この小さき私に、彼のような素晴らしい友人をお与えになったことを感謝します。」
彼は神への感謝を忘れる事はなかった。
「ミハイル、聖戦の日は近い。神は我々を勝利に導いてくださる。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます